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日系社会のフロンティアを尋ねる vol.10 - 「Roy's」オーナーシェフ ロイ・ヤマグチ氏
日系社会で活躍するリーダーと各界で活躍する日系リーダーを尋ねるシリーズ。第10回は、「ハワイアン・フュージョン」フードで有名なレストラン「Roy's」のシェフ、ロイ・ヤマグチ氏にインタビューした。

ロイ・ヤマグチ

東京都生まれ。日系二世の父と日本人の母を持つ。アメリカのCulinary Institute of Americaで学ぶ。1988年、ハワイに「Roy’s」一号店をオープン。さまざまな食文化を合わせた「ハワイアン・フュージョン」と呼ばれる料理の創作者。権威ある料理賞「ジェームス・ビアード賞」を受賞。



ハワイアン・フュージョンは心の状態

—食べ物は、文化的な架け橋といわれますが、ロイさんはどのようにお考えでしょうか。

食べ物は、“料理の外交術”と考えています。人々が集い、食べ物を通して文化を分かち合えるような状況ならば、より一層良いでしょう。このような状況だと、人はリラックスして交友を深めることができ、おしゃべりもさらにはずみます。全く違う文化圏の人々が出会う場にも、食べ物はより効果を発揮します。人々は互いに学び合い、さまざまな話や夢を分かち合い、彼ら自身の文化について話をすることができるでしょう。また、自分がどんな人間なのか、何をしているのかなどについても語れるでしょう。食べ物は、人々が集う時はもちろん未来の友好関係を築くのにも、とても効果的です。

—「ハワイアン・フュージョン・フード」といえば「Roy's(ロイズ)」と言われるほどですが、この言葉の意味を詳しく教えてください。

ハワイにいれば、「ハワイアン・フュージョン・フード」には、ハワイ産の魚や肉など素晴しい食材を使います。アメリカ本土でも「ハワイアン・フュージョン」という言葉を使いますが、税関などの関係でハワイ産の製品などは輸送が限られているので、ハワイ産の製品で全てを調理することはなかなかできません。しかしアメリカ国内の支店では、その土地で生産された食材を使い、その地域の特色を出すようにしています。
また「ハワイアン・フュージョン」とは心の状態ともいえます。現地産の食材を使うだけでなく、その中には父の味と私の今の味が共存しています。私の父は、私が小さい頃に料理をしてくれました。私の過去と現在が「ハワイアン・フュージョン」で一つに融合されています。
「フュージョン」では、違う味、違う文化を一緒にすることが重要です。「文化とは何だろうか」と理解することが大事です。全ての文化には伝統的な料理方法がありますからね。私たちのようなフュージョン・フードを作り上げるためには、私たちが異文化同士をブレンドして、さらに異文化について学ぼうとしなければなりません。
「ハワイアン・フュージョン」について考える時、日本人、中国人、フィリピン人、ベトナム人など民族の背景についても考え、それぞれの民族の伝統や文化についてさらに学びます。こうして「ハワイアン・フュージョン」ができるのです。


—これからのハワイアンフードやアジアンフードはどんな展開になるとお考えですか。

主流のレストランチェーンでも、アジアンフードはメニューでよく見かけますし、とても人気が高いです。彼ら独自の“アジア風の一品”となっています。アジアンフードは健康的で軽くて物珍しい食品としてメニューでは扱われているようですね。
アジアの影響は、まだまだ大きくなるでしょう。これまでは、和食、中華料理、タイ料理が多かったのですが、今は韓国料理が台頭してきています。将来的にはフィリピン料理やマレーシア料理なども人気がでますよ。イタリア料理を例にあげると、イタリア料理と一口に言っても、シシリアン、タスカンなどそれぞれの地域で料理に特色があるような感じになっていくでしょう。


—昨年、ユネスコの無形文化遺産に登録された「和食」についてはいかがですか。

多くの人が和食を好きですね。レシピも多く出版されています。和食の人気はまだまだ広がるでしょう。和食は最初に寿司が流行して、次に居酒屋に移行し、今はラーメンが人気ですね。

—昨年、ユネスコの無形文化遺産に登録された「和食」についてはいかがですか。

多くの人が和食を好きですね。レシピも多く出版されています。和食の人気はまだまだ広がるでしょう。和食は最初に寿司が流行して、次に居酒屋に移行し、今はラーメンが人気ですね。

—ロイさんはさまざまな団体で理事をされています。そちらについてお聞かせください。

主に力を入れているのは、第一に私が料理を勉強したCulinary Institute of Americaの理事です。若いシェフを継続して教育すること、彼らが学校できちんと学び成功することを確かなものにしたいからです。またアメリカは、さまざまな料理を食べることができる場所だということを確立するのは非常に大切なことだからです。
二つ目は米日カウンシルです。米日関係は非常に重要です。若い世代の人たちが、より積極的になり、絆や友情を深め、共に働くことは将来にとってとても良いことです。以前から不思議でしたが、アメリカと違い日本では資金集めが盛んではないですね。その中で「TOMODACHI
イニシアチブ」は非常に面白いプログラムだと思います。これは社会貢献を始める良いきっかけになると思います。
三つ目は日系人部隊についての教育団体「Go For Broke National Education Center」の理事長です。今日の日系人があるのは、彼らのお陰です。
四つ目は、「Brand USA」の理事長です。これは、2009年にオバマ大統領がアメリカへの外国人旅行者を増やす法案に署名したことから始まりました。私は、アメリカ旅行を促進するために発足された「Brand USA」の理事長に、ゲイリー・ロック米国商務長官から任命されました。


シェフはお客様の思い出を創る人

—料理の仕事で、何が一番好きですか。

食文化や「ハワイアン・ヒュージョン」について自らの考えを語るロイ氏 = ウッドランドヒルズにある「Roy's」にて
料理は、私にとってリラックスする素晴らしい方法ですね。一つの料理を創作するのに私の性格が出ます。料理をしている最中は、私の心、感覚、視覚、嗅覚、味覚、すべて使います。例えば、有名人や伝説の何か、成長している何かのことを考えて、そこから料理を創造する感じでしょうか。創られた料理は、ただちにお客様に出されて、お客さまの反応から結果もすぐに分かります。ある種のプライドやインスピレーションが料理には必要ですね。
私は料理するのがとても楽しいんです。楽しみながら収入を得ることができるなんて、これほど素晴らしいことがあるでしょうか。キッチンには、15時間でも平気で立っていられますよ。
シェフは、一日の終わりにお客様の思い出を創ることが仕事です。誰かが私の作った料理を楽しんでくれる、初めて食べる料理を楽しんでくれる。私にとってこれ以上素晴らしいことはありません。「お客様にとって、素敵な思い出になればいいな」と思っています。料理というのは、文化と文化を繋ぐ架け橋でもありますし、人と人とを繋ぐ架け橋でもあります。もし食事に満足していただけたら、そのお客様は婚約するかもしれません。(笑)そして、お二人の思い出の記念日には、毎回、レストランに来ていただけます。(笑)


—20年前は、「フュージョン・フード」はあまり知られていませんでした。アメリカのレストランと消費者は何か変ってきましたか。

以前は「そのレストランへ行けば、この料理が食べることができる」とレストランへ行きました。しかし世界はテレビやインターネットの普及でどんどん小さくなってきて、現代のお客様は勉強もしていますし、さまざまな知識もあります。そこで、他と違う物を求めるようになってきました。これはすごいことですよ!

—シェフを目指す若い世代に、アドバイスをお願いします。

私は、あまりアドバイスをしないようにしています。しかし、「一番大切なことは」と聞かれたら、「一生懸命に働くことだよ」と、若者には伝えます。シェフというのは、他の人たちと働く時間帯が違います。一般の人の休日に働きますし、夜も遅いので、一般の人たちと生活する時間にズレがあります。一日中、立っていなければならないですし、油っぽくなったり、焦げ臭くなったりもします。私には、これらはとてもエキサイティングなんです。これら全てのことが大好きです!創造することも、自分の全ての感覚を使うことも大好きです!もちろん、若い世代には、料理に興味を持ってもらいたいです。しかし、簡単ではないことを彼らは理解しなければなりません。テレビを見ているだけでは、次の「料理の鉄人」にはなれません。有名なシェフにはなれません。懸命に働くことです。


=Tomomi Kanemaru

2014/09/13 掲載

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