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コラム

ピアノの道
vol.11 戦時中の在日ユダヤ人音楽家の貢献

2019-06-05

 “When playing music, it is possible to achieve a unique sense of peace(音楽を奏でる時、他では在り得ない平和を感じることができる)。”パレスチナ人を含むアラブ系とユダヤ人の若い奏者たちで形成されたオーケストラを養育して和平活動を行うイスラエル人指揮者、ダニエル・バレンボイムの言葉です。

 ピアニスト田中希代子(1932-1996)が日本人として初めて国際音楽コンクールの最高賞を受賞したのは1952年です。大戦終結から7年、黒船到来から99年での計り知れない快挙。もちろん本人の努力と資質、周りの理解と支援もあったのですが、もう一つあまり知られていない歴史的背景があります。戦前から第二次世界大戦を通じて在日した、ユダヤ人避難民の貢献です。

 1933年、ナチスはユダヤ人を教職やオーケストラなどの文化機関と言った公職から追放しました。ヨーロッパ留学をした山田耕筰や近衛秀麿などが、弾圧に苦しむユダヤ人音楽家を積極的に招聘したこともあり、1930・40年代の日本の音楽界はそれまで世界的に活躍していたユダヤ人音楽家たちの演奏活動や教鞭で充実します。中村紘子も小澤征爾も私の幼少期の先生も、こういうユダヤ人避難民に師事したり、演奏に感動したり、多大な影響を受けているんです。

 戦中・戦後でさえ、音楽が人と人との間にかけ続ける橋のパワーと言うのはすごい。防空壕に楽譜やレコードを持ちこんだ人たち。ユダヤ人絶滅を目指していたドイツの音楽をも分け隔てなく情熱的に日本人に伝授したユダヤ人音楽家たち。その音楽を引き継いで、終戦直後から国際舞台に躍り出た日本人音楽家たち。

 ショパンの舞踏曲はポーランド人にしか弾けない、と言うことがまことしやかに言われています。そんなショパンの華やかな舞踏曲が最終楽章を飾る協奏曲をポーランドのオーケストラと共演させて頂いたことがあります。ビビッて最初の通し稽古を終え「ポーランドのショパンを教えてください」と挨拶した私に「Your Chopin is so beautiful!」と拍手してくれたオーケストラ。打ち上げではお酒が入って、腕を組んで皆で一緒に踊りました。
 音楽って本当に凄いんです。


この記事の英訳はこちらでお読みいただけます。
https://musicalmakiko.com/en/?p=1127


※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。
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平田真希子 D.M.A. (Doctor of Musical Arts)

日本生まれ。香港育ち。ピアノで遊び始めたのは2歳半。日本語と広東語と英語のちゃんぽんでしゃべり始めた娘を「音楽は世界の共通語」と母が励まし、3歳でレッスン開始。13歳で渡米しジュリアード音楽院プレカレッジに入学。18歳で国際的な演奏活動を展開。世界の架け橋としての音楽人生が目標。2017年以降米日財団のリーダーシッププログラムのフェロー。脳神経科学者との共同研究で音楽の治癒効果をデータ化。音楽による気候運動を提唱。Stanford大学の国際・異文化教育(SPICE)講師。

詳しくはHPにて:Musicalmakiko.com




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