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コラム

苦楽歳時記
vol168 二大性格

2015-10-08

 行動よりも先に自己省察に苦悩する内気で懐疑家のハムレットと、誇大妄想であるが冒険心旺盛で猪突猛進するドン・キホーテと比較して、ロシアの小説家ツルゲーネフは「ハムレットを愛することは容易ではないが、ドン・キホーテを愛せない者はいないだろう」と談じた。

 『他人をほめる人、けなす人』の巻頭で、著者のフランチェスコ・アルベローニは、楽観的な人と悲観的な人について論じている。

 楽観的人間は客観的で、鋭い洞察力と結束力を帯びているのに対して、悲観的な人間は吝嗇(りんしょく)であるという。即ち、オプティミストは困難も容易に乗り越える度量があるが、ペシミストは困難におびえてすくんでしまう。

 明けても暮れても杞憂を友とする優柔不断なハムレット型よりも、何事に対しても物怖じしないで厳然と立ち向かうドン・キホーテ型の方が率直で頼もしい。

 概してドン・キホーテのような勇敢な夢想家ばかりが、持てはやされているのかというとそうではない。行動派には失態はつきもので、周囲の者に及ぼす当惑は計り知れないものがある。状況に応じて、陰と陽をほどよくブレンドさせる術が備わっていれば理想的なのであるのだが…。

 自称、躁鬱病の北 杜夫は、『夜と霧の隅で』を執筆した時期に、ハムレット型抑鬱症に陥っていた。その後、しだいに意気揚々と盛り上がり、ドン・キホーテ型「どくとるマンボウ」に変身、一世を風靡(び)する。

 気高く優愁な作家として知られていたツルゲーネフも、躁鬱病に冒されていた。ハムレットを「疑いの象徴」とし、ドン・キホーテを「信念の象徴」であると道破したときのツルゲーネフは、疑いもなく士気が絢爛に昂揚する躁状態の頂点にあったのだ。

 生涯をハムレット型ペシミストとして、その深淵で悩み、書き、生きぬいたツルゲーネフが憧れたのは、数々の挫折をくつがえしながら勇往邁進する沈まぬ太陽、ドン・キホーテの生き様であった。

 ハムレットかドン・キホーテか、この二大性格から何を見きわめるのか、それこそ、「そこが問題」である。


※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。
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新井雅之

文芸誌、新聞、同人雑誌などに、詩、エッセイ、文芸評論、書評を寄稿。末期癌、ストロークの後遺症で闘病生活。総合芸術誌『ARTISTIC』元編集長。




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