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コラム

苦楽歳時記
vol134 心境の吐露

2015-02-12

 昨年の初夏から、外食は控えるように心がけている。正確には控えなくてはならなくなったと申すべきだろう。昨今では月に一度の割合で、ファーストフードのテイクアウト。吾輩にとっては一抹の散財である。今や、爪に火をともしながら生きながらえているのだ。

 体力も落ち、仕事の量も減り、低収入の物書きに凋落(ちょうらく)してしまった。まとまった実入りが得られないから、つつましやかに棲息(せいそく)するしかないのである。

 末期癌とストロークを患って以来、もう七年近くも本格的ななりわいに打ち込んでいない。悪疾も一進一退をきわめているから予断を許さない。

 吾輩は大食漢であるから、滋味豊かなものが食せないとあれば、兵糧攻めにあった境地に陥ってしまう。闘病者であるがゆえに、酒類もたしなむことはできない。金欠病であると佳肴(かこう)な膳も玩味できない。吾ながらしがない余生を過ごしているものだと思う。

 家人に言わせてみれば、今の状況は感謝なことであるという。あなたは暴飲暴食が引き金となって、取り返しのつかない病気になってしまったが、命が守られて家族と幸せに暮らしている。以前の吾輩は彼女の向きについては、全く意に介さなかったのである。

 これからの生き様は、まさしく匍匐(ほふく)前進である。まどろっこしくて、時には心が折れそうになるだろうが、そんなときには好きなジャズを聴きながら、集中して物を書くことしか道はない。そして希望の小さな灯は、愛に愛持つ娘がいることだ。

 今までに教会の方々から、精神的、経済的、能動的な支援を賜ってきたが、とりわけW・LAホーリネス教会と、サウスベイ・ジャパニーズ・クリスチャン・フェローシップ教会。それからラスベガス日本人教会の皆さんが、激励してくれたのである。

 個人の皆さんにも、励ましと心のこもったお祈りをしていただいた。これらの人々の温情に報いるためにも、吾輩は奇跡を信じて一途に走り続けなければならない。

 ある朝、思わず庭に飛び出して、朝露におびた花々や樹木、そして小動物や野鳥のさえずりを聞いていると、生命の尊厳を感じずにはいられない。

 翌朝早くにベランダで佇み、東の空が明るんでくると、幻想的な冬桜のような朝焼けに心を奪われた。そして、全ての原初を垣間見た想いにいざなわれていた。


※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。
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新井雅之

文芸誌、新聞、同人雑誌などに、詩、エッセイ、文芸評論、書評を寄稿。末期癌、ストロークの後遺症で闘病生活。総合芸術誌『ARTISTIC』元編集長。




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