Alice in WINEderland
Vol.50 The Happy Stone
2014-01-09
ワインブログを書き始めてから4年が経とうとしている。開始当初のブログを振替っていると、またこのワインに再会したいと思った。Piedra Felizという名前のこのワインは、チリのアコンカグア・カサブランカで造られているピノノワール主体のワイン。醸造家はフランス・シャブリで有名なMichel Laroche氏とチリワインの将来を担うと言われている期待の星、Jorge Coderch氏である。各ジャーナリストからの評価も高く、所謂チリ独特の凝縮した果実味というよりは、フランスの繊細なピノノワールに似た旧世界感が印象に残るワインと言える。実際、ブルゴーニュの優良ピノノワールの生産に使用されているクローン777をチリの原種に接木して葡萄栽培に取り組んでいるとのことだった。公式テイスティングノートでは、ラズベリーやチェリーの特徴的なアロマと、ナツメグや乾燥させたオークのヒントを感じるエレガントなワインで、すみれの香りとシルクのような後味が楽しめるワインと表現されている。しかし、2007年ヴィンテージ以降は「Vina Punto Alto」に吸収という形で改名。Piedra Felizは現在市場に出ているだけの幻ワインとなった。
なぜこのワインにこだわるのかというと、ワインスクールに通い始めた2008年、ワインの基礎をかじった頃、奮発して購入した思い出の1本だからである。東京で勤めていた当時、職場の近くに、新世界ワインを専門とするワインショップがあった。仕事で結果を出せていないのでは、という焦りの中、今後のキャリアパスの不安などで、正直、精神的に大きな石にぶつかっていたように思う。未熟な自分への苛立ちから、何か大人らしい、かっこいいことがしたいと思い、趣味のつもりで始めたワインの勉強。それも、気がつけば、真剣に取り組むようになっていた。
時が流れ、今ワインの世界で仕事ができることをとても嬉しく思う。スペイン語で「幸福の石」という意味のこのワインには、やはり何か運命的なものを感じるような気がする。
※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。