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コラム

苦楽歳時記
Vol.79 喜び

2014-01-17

大病を患う以前、時おり出向いた仕事先の近くに、たいそう繁盛しているメキシカン・ファーストフードの店がある。昼前から店先に客が並び始めて、正午を過ぎた辺りから目白押しになる。安価でボリュームがあって、美味いとくれば栄えること受け合いである。

ところが、「あの店は、どうもね」と、異論を唱える者が多かれ少なかれいる。味覚には、その人の好みというものがある。万人から愛好される味を作り出すのは容易ではない。

ところがそうではなかった。少し離れた場所に、同じようなメキシカン・フードの店がある。店舗は繁盛店よりも二回りほど小さい。ブリトーの味は何ら遜色がない。

仕事先のスタッフは、たとえ繁盛店が空いていたとしても、わざわざ足を延ばして小さな店の方へ買いに行くという。

そのわけを尋ねてみると、小さな店でオーダーを受け付けているメキシコ系の女性の笑顔が、爽やかで非常に感じが良いからという答えが返ってきた。

なるほど、繁盛店の方は従業員一同、仏頂面をさげて突っ立っている。対応も粗雑で、全体の雰囲気がおろそかである。

小さな店のオーダーを入れるカウンターには、物腰の柔らかい、にこやかな女性が立っていて親切に接客してくれる。如才ないてきぱきとしている挙措から、彼女のまめやかさがにじみ出ているのである。

タコやブリトーを買い求めるだけで、欣快(きんかい)な気持ちが芽生えてくる。彼女の胸元に垂れ下がっている黄金の十字架は、敬虔なカトリック信徒の証しなのだろう。莞爾(かんじ)として微笑む彼女の表情をひとたび見たら、誰でもそのように思いたくなる。

「いつも喜んでいなさい」。聖書につづられている一句が、僕の脳裏を星になってかけぬけた。


※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。
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新井雅之

文芸誌、新聞、同人雑誌などに、詩、エッセイ、文芸評論、書評を寄稿。末期癌、ストロークの後遺症で闘病生活。総合芸術誌『ARTISTIC』元編集長。




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