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コラム

ピアノの道
vol.174 時のバランス

2026-04-05

音楽とは何か。

音楽の道はこの問答を極めることだと言っても良いかもしれません。音楽とは世界、文明、そして自分にとってどんな目的を持つ何なのか。ピアニストとしての経験上、私は音楽とは過去と現在と未来のバランスを取ることで真実を分別する術ではないかと思うのです。

奏でるという行為は、過去を土台に現状を築き未来を形成する稽古です。過去を踏まえ、現状を吟味し、未来の可能性を最大化する。これは練習・考察・人生の全てに応用できる術です。このバランスが崩れると悲惨です。過去に囚われると現状に不自由が生じ未来が不穏になります。現状に固執すると過去からの方向性が揺らぎ未来の不確定性が増大します。未来のみを見据えると現状の賞味と過去からの学習がなおざりになり無根拠な未来形成の危険が発生します。

過去・現在・未来のバランスを交渉する上で大事なのは、自分の認知傾向を差し引く達観性です。脳の最大の動機は生存本能です。その為過去の危険を過剰に記憶し、現在の感知は危険察知を優先し、未来の自己保身を図ります。生存本能を超越するためには、好奇心・社会性・自己実現といった人間性が有効です。そこで効果的なのが美的感覚なのです。

私がこのシリーズを「ピアノの道」と銘打つのは、火縄銃が主流戦力となっても剣術を重んじ、廃刀令から20年以上経ても新渡戸稲造に「武士道」を執筆させた剣道に、音楽家たちが何世紀もかけて積み重ねてきた伝統と修行を重ねるからです。明治維新の様などんでん返しの可能性が近未来に匂う今日この頃、人間の真髄が試される時に私の様な人間が重ねてきた鍛錬が本領を発揮するかもしれないと思うからです。


※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。
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平田真希子 D.M.A. (Doctor of Musical Arts)

日本生まれ。香港育ち。ピアノで遊び始めたのは2歳半。日本語と広東語と英語のちゃんぽんでしゃべり始めた娘を「音楽は世界の共通語」と母が励まし、3歳でレッスン開始。13歳で渡米しジュリアード音楽院プレカレッジに入学。18歳で国際的な演奏活動を展開。世界の架け橋としての音楽人生が目標。2017年以降米日財団のリーダーシッププログラムのフェロー。脳神経科学者との共同研究で音楽の治癒効果をデータ化。音楽による気候運動を提唱。Stanford大学の国際・異文化教育(SPICE)講師。

詳しくはHPにて:Musicalmakiko.com




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