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コラム

マイ・ワード・マイ・ヴォイス
vol.69 灰色の鳥(4)

2026-03-01

プラトンの「哲学とは死の練習である」という主張の根本には、身体で経験するものと理性で捉えるものとの間の分断があります。「△」という図形と「三角形」という概念とは根本的に別の存在で、前者はいわば偽物で後者が本物である。これは彼のイデア説にもつながります。私たちが五感を通じて知覚できるものを超えた世界に、理性でのみ捉えられるイデア界が存在する。おにぎり、富士山、テントが、全く別のものなのに三角形に見えるのは、それぞれが「三角形そのもの」、三角形のイデアとつながり、「三角形」という特性をおびているからである。同様に、ダックスフンド、プードル、チワワなどを「犬」と認識できるのは、特徴がばらばらな個々の犬が「犬のイデア」につながっているからである、と。

ここで問題が生じます。プラトンに従えば、晴れた空、ガリガリ君ソーダ味、ドラえもんが青いのは、それぞれが「青のイデア」につながっているからです。では、「青のイデア」自体は青いのでしょうか?イデアなのだから「青い空」や「青いアイス」などの偽物の青ではなく「青そのもの」、本物の青です。その青が青くないなんてことがあるでしょうか?青のイデアは青い、とすると、青いのだから人間が色を確認できることになります。五感を通じて知覚できるものはいわば偽物。ということは、イデアはイデアではない、ということになります。

そう、イデア論はその根本に矛盾を孕んでいるのです。でもこれはプラトンの考えが足りなかったからでも、彼が勘違いしたからでもありません。彼は「△」と「三角形」との間の否定しがたい違いを認め、そこから導き出される論理を極限まで推し進めただけです。両者は根本的に違う。だからイデアを想定しなければならない。でも、その想定は同時にイデアを否定することにもなる。

「△」と「三角形」の間の分断は、身体と理性との分断に通じ、それが「哲学は死の練習である」という主張の根本にあるならば、彼の死に関する思想もそれ自体によって否定されてしまいます。では、どうすればいいのか?森鴎外が1911年、49歳の時に発表した『妄想(もうぞう)』という短編小説が示唆に富んでいます。(続く)


※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。
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葛生賢治

哲学者。早稲田大学卒業後、サラリーマン生活を経て渡米。ニュースクール(The New School for Social Research)にて哲学博士号を取得した後、ニューヨーク市立大学(CUNY)をはじめ、ニューヨーク州・ニュージャージー州の複数の大学で哲学科非常勤講師を兼任。専門はアメリカンプラグマティズム、ジョン・デューイの哲学。現在は東京にて論文執筆、ウェブ連載、翻訳に従事。ウェブでは広く文化事象について分析を展開。




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