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コラム

ピアノの道
vol.164 儀式は社会ごっこ

2025-11-02

色々な状況で演奏してきました。機関銃を掲げた兵隊やその国の文化大臣や数国の総領事が臨席する中6千席全てが埋まった会場で演奏したことも、ホームコンサートで十数人の為に演奏したこともあります。何百席という立派な会場で、いざ舞台に出たら観客が10人に満たず一瞬呆然としたこともあります。同じものが広報とマーケティングとイメージ戦略で、売れたり売れなかったりすると実感します。

そんな私が面白いと思う演奏会の共通点が人々の演奏会という形式へのこだわりです。例え聴衆が10人でも、奏者は劇的なお辞儀をし、観客は生真面目に拍手をします。演奏中は観客は微動だにせず静寂。裏方スタッフは、世の一大事かという早さで静かにすり足で走ったり、懸命な口パクやジェスチャーで合図を送ったり、王宮の厳かさで舞台へのドアを開けてくれたりします。

この真剣さでみんなが社会改善や環境問題に取り組めたら…そう思うのはちょっと違うと最近思うのです。暗黙の合意の元に全員参加で行う儀式というのは、そういう社会参加や協力の練習なのではないのか。儀式というのは、一人の反抗や白けや茶化しで簡単に壊れてしまう脆いものです。でも私は今まで多分大小1,000に近い演奏会に出演してきてまだ一度もそういうサボタージュに出会ったことが無い。それは人間がやはり社会的動物として、協力して一緒に一つの理想を創り上げたいという本能があるから、だからこういう儀式を楽しく感じるからではないでしょうか。

子供は真剣に遊びます。私も毎日一生懸命おままごとをしてました。演奏会の様な儀式はもしや大人の遊び―「社会ごっこ」なのでは…?そう思いながら、照明さんも、音響さんも、収録係さんも、チケットもぎりさんも、進行係さんも、そして勿論聴衆の皆さんも全員愛おしく感じながら、今週末は金・土・日・月と本番を4つこなしてきました。観客総立ちの拍手を思い出しながら、興奮の名残と甘い疲労感の中でこのエントリーを書き記しています。


※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。
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平田真希子 D.M.A. (Doctor of Musical Arts)

日本生まれ。香港育ち。ピアノで遊び始めたのは2歳半。日本語と広東語と英語のちゃんぽんでしゃべり始めた娘を「音楽は世界の共通語」と母が励まし、3歳でレッスン開始。13歳で渡米しジュリアード音楽院プレカレッジに入学。18歳で国際的な演奏活動を展開。世界の架け橋としての音楽人生が目標。2017年以降米日財団のリーダーシッププログラムのフェロー。脳神経科学者との共同研究で音楽の治癒効果をデータ化。音楽による気候運動を提唱。Stanford大学の国際・異文化教育(SPICE)講師。

詳しくはHPにて:Musicalmakiko.com




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