ピアノの道
vol.161 美をもって、為せば成る
2025-09-21
右、左、右、左、右、左、吸って吸って吐いて~、吸って吸って吐いて~…走っています。先週末は12マイル。あともう少しでハーフマラソンに手が届きます。
リトル東京ランニングクラブの仲間と一緒に毎週日曜日グリフィスパークを走るようになったのは数年前。健康のためとクラブ仲間に会うのが楽しみで習慣付きましたが、それでも5マイルを走り切るのは奇跡に近く、道中ほとんど歩いていました。何を隠そう体育が「2」だった私はすぐ息が切れてしまう病弱な子供でした。健康な大人に成長した今でも、その苦手意識に甘えていたところがあると思います。
ところが。今年40周年を迎えたLAマラソンでクラブ仲間を応援しに行ったのをきっかけに、そんな私が一挙に触発されたのです。政治分断・AI・国際紛争・核兵器・異常気象…不安要素に押しつぶされそうになっていた時に、額に汗して無心で走る何万人という人々の姿を美しいと思ったのです。
何をどう考えたら良いのかすら分からなくなるような混乱時には、美しいか否かが判断基準になると思うのは私が音楽家だからでしょうか。究極の美は同時に真にも善にも繋がると実感しているのです。例えばあるメロディーをどう歌えば一番美しいか追及していくと、表面的な表現や技術の誇張などがそぎ落とされ、結局素直が最高の美だと落ち着きます。
5マイルを目標に毎週走っていたころは4マイル辺りでもう足が痛い気すらしていましたが、12マイルを目標に走っていると5マイルなんてなんのその!痛くも痒くもありません。何しろ私は来年3月には26.2マイル、42.195キロを走るんですから!そして日の出と共に走り始めると、世界は実に美しいのです。木漏れ日。朝露。草木の香り。朝もや。鳥の声。
吸って吸って吐いて~。右、左、右、左…
※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。

