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コラム

ピアノの道
vol.160 AIの時代に奏でる音楽

2025-09-07

「AIが音楽家に取って代わる日が来るのでしょうか」…最近、そんな質問を受けます。私の答えはNOです。

音楽とはPRODUCT(製品)ではなく、PROCESS(過程)でありPRACTICE(行為・修練)です。AIが提示するのは魂のない偽物…実体のない影です。

こんな学友がいました。十代にしてすでに修士を取得している。どんな難曲も一週間もあれば完璧に暗譜し、綺麗に弾きこなせる。でもなぜか彼の演奏の印象が薄い時がある。彼のお陰で気づけたのです。簡単なことに愛着は湧きにくい。七転八倒して曲と格闘するように練習することで、私は曲への解釈や愛着やこだわりが深まるんだ、と。

音楽の修練も人生の日常も、本当の醍醐味はその過程で生まれる気づきや思い出と、そこに生まれて育まれる音楽や人生に対する愛着です。我々は大きな勘違いをしています。記憶や思い出のごみ屋敷をコンピューターやクラウドに貯めこみながら、自分の記憶力はどんどん衰退。(スマホ以前は暗記していた家族や友人の電話番号…今はいくつ空で言えますか?)そして今、生成AIの一般化が思考や創造のプロセスや、真善美を追求する修練までもを機械任せにしようとしています。

私は生演奏は手料理に、録音は缶詰に例えられると思っています。「体には栄養が必要で、心には音楽が必要。飢え死するよりは缶詰を食べた方が良いように、心貧しく生きるよりは録音でも音楽があった方がよい。でも缶詰はその場しのぎの代用品で、手料理の愛情や五感の思い出には及ばない」という意味です。この比喩を延長させると、AIが吐き出す音楽や情報はガムの様な物です。味はあるかもしれない。口の寂しさがまぎれるかもしれない。でもガムだけでは我々は飢え死にします。(このエッセーは書く過程でAIを一切使っていません。)

この記事の英訳はこちらでお読みいただけます。


※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。
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平田真希子 D.M.A. (Doctor of Musical Arts)

日本生まれ。香港育ち。ピアノで遊び始めたのは2歳半。日本語と広東語と英語のちゃんぽんでしゃべり始めた娘を「音楽は世界の共通語」と母が励まし、3歳でレッスン開始。13歳で渡米しジュリアード音楽院プレカレッジに入学。18歳で国際的な演奏活動を展開。世界の架け橋としての音楽人生が目標。2017年以降米日財団のリーダーシッププログラムのフェロー。脳神経科学者との共同研究で音楽の治癒効果をデータ化。音楽による気候運動を提唱。Stanford大学の国際・異文化教育(SPICE)講師。

詳しくはHPにて:Musicalmakiko.com




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