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コラム

ピアノの道
vol.158 80年後

2025-08-03

「ピカは、ひとがおとさにゃ、おちてこん。」

絵本「広島のぴか」(1980)は7つで被爆したミーちゃんを介護し続けるお母さんの、そんな言葉で終わっています。その絵本をやはり7つくらいの私に買い与えたのは被爆した祖父だったのか、被爆二世の母だったのか。

「みず、みず...」

『広島のぴか』でも、漫画『はだしのゲン』でも、教科書に載っていた『おこりじぞう』でも、被爆者がのどの渇きを訴えながら亡くなっていく様が描かれていました。原爆投下から80年が経つこの夏、私は水にまつわる曲を演奏して私なりの平和への祈りとしたいと思っています。

一曲目はマーガレット・ボンズ(1913~1972)が黒人霊歌『Wade in the Water(水の中を行け)』をピアノ曲にアレンジした『Troubled Water』(1967)。オリジナルの黒人霊歌は19世紀アメリカ南部諸州の奴隷たちが、奴隷制廃止だった北部に逃げるための教えとしたという伝説がある歌です。奴隷制は廃止されども市民権運動で平等を訴えなければいけなかったアフリカ系アメリカ人のボンズがこのピアノ曲を「Troubled Water(混乱・困難と言う意味がある)」と題した理由に、今日の平和運動と通じるものを見出したのです。正義や平和は一度勝ち得て安心できるものではないという戒めです。

二曲目はフェデリコ・モンポウ(1893~1987)の『一滴の水について』(1943) という前奏曲です。涙とも思える一滴の水が波紋となって広がっていくさまが美しいカノンになった曲です。流す涙は無駄にはならない、社会を動かす、という応援歌になれば幸いです。

広島原爆記念日の8月5日(火)4:15pm PSTはサンディエゴ・WISH(Worldwide Initiative to Safeguard Humanity)というNPOの式典にオンライン参加させて演奏の動画とスピーチをお届けします。長崎原爆記念日の8月9日(土)は横須賀の「カスヤの森」現代美術館でピアノトークを行います。

「世界の共通語」と言われる音楽を専門とする音楽家であり、被爆者を祖父に持ち日本で生まれ在米36年目私は、世界平和のために何ができるのかー試行錯誤を続けます。

この記事の英訳はこちらでご覧いただけます。


※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。
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平田真希子 D.M.A. (Doctor of Musical Arts)

日本生まれ。香港育ち。ピアノで遊び始めたのは2歳半。日本語と広東語と英語のちゃんぽんでしゃべり始めた娘を「音楽は世界の共通語」と母が励まし、3歳でレッスン開始。13歳で渡米しジュリアード音楽院プレカレッジに入学。18歳で国際的な演奏活動を展開。世界の架け橋としての音楽人生が目標。2017年以降米日財団のリーダーシッププログラムのフェロー。脳神経科学者との共同研究で音楽の治癒効果をデータ化。音楽による気候運動を提唱。Stanford大学の国際・異文化教育(SPICE)講師。

詳しくはHPにて:Musicalmakiko.com




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