ピアノの道
vol.157 国際化のすゝめ
2025-07-18
パスポートを持っている日本人ってどれくらいいると思いますか?…今年2月の外務省の発表によると17.5%、大体6人に1人なのだそうです。私は過半数かと思っていました。
インターネットの時代に英語が世界の言語になる中、我々が失いつつあるのは何なのかを考察した『日本語が滅びるとき:英語の世紀の中で』(2008)という本があります。著者は12歳で渡米しフランス文学で博士課程を修了するまでアメリカだった水村美苗氏ですが、それでも・だから日本語でしか書けないことがあると主張します。私も日本語でも英語でもそれぞれの言語でしか言えないこと、至りえない考えがあることを常に実感していますし、国境を越えてみないと知りえない世界観や郷愁や自分というのがあると思っています。
最近「AIが同時通訳をするようになるのでもう言語教育は必要ではない」といった考えを耳にすることがあります。学習を必要知識や得るための苦労と思ってしまうとそうかもしれません。でも逆に学びを「好奇心を満開にして思いを馳せる時間」と思ったらどうでしょう。例えば言語学習というのは語彙や文法を増やすだけではなく、その言語の背景にある歴史や文化や世界観を体得する過程です。食べ物が私たちの血肉を形成するように、知識や体験は我々の視点や考え、いわば我々の人格の土台を作ってくれます。学習はご馳走!—そう思えば、AIの同時通訳や自動翻訳なんて点滴の栄養補給のよう…損な気持ちにはなりませんか?言語習得は曲をマスターする過程に似ています。繰り返し・集中・分析…こういうことが面倒かワクワクかは、生きることを楽しめるか否かの境目ではないでしょうか。だってこういう挑戦って人生そのもの!
地球は一つ。我々は未来の環境・経済・安全を共に形成していくチームメンバーです。他のチームメンバーの言葉や生い立ちや生活環境を知った方が、より良いチームプレーが楽しくできます。スマホを捨てて、国際化しよう!
※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。

