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コラム

マイ・ワード・マイ・ヴォイス
vol.58 未だ来たらず(1)

2025-04-04

先日、雑誌『ザ・ニューヨーカー』に掲載されたカートゥーンに面白いものがありました。「サイキック(霊能者)」と書かれた店の前に座り込む女性が、通りかかった人に言います。「誰も未来を見たがらないから商売上がったりよ」と。明るい未来どころか、未来そのものを描くことが非常に難しいというのが現在の共通認識ということでしょうか。

奇しくも、最近見た2本のタイプが全く異なる映画が、その根底に「未来」という共通テーマを含んでいることに気が付きました。一つは『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』。もう一つは『パスト ライブス/再会』。前者は2019年公開の『ジョーカー』の続編で、バットマンシリーズに登場する悪役キャラクターのジョーカーを主人公にした作品。後者は、子供の頃お互いに恋心を抱いていた韓国人の男女が24年の時を経てニューヨークで再開するラブストーリー。片やサイコスリラー映画、片や恋愛映画ですが、それぞれが異なる未来観を提示していると思ったのです。

『~フォリ・ア・ドゥ』は前作でジョーカーとして覚醒した貧しき青年・アーサーのその後を描いています。貧困、持病の悪化、孤独、周囲の無理解などから精神的に追い込まれた彼が、行き場を失い、殺人事件を起こし、殺害されたのがエリートで富裕層の人間だったため、彼の住むゴッサムシティの貧困層の人々からヒーローに祭り上げられ、逮捕されるまでが前作。本作は、「アーサーは罪に問われるのか」という問題を軸に彼を裁く法廷を中心として物語が展開します。彼の殺人は解離性同一性障害から生まれた別人格の「ジョーカー」が行ったものであり、彼は無罪であるという弁護士側の主張と、別人格など存在せず、彼は有罪であるとする裁判所と、アーサーこそが悪のヒーロー・ジョーカーであると信じ、貧富の差が極限にまで達したゴッサムシティを破壊してくれるジョーカーの「再臨」を期待する人たち、そしてその代表者として描かれる女性ハーレイが主な要素。

この映画の根底にある未来観は、ジョーカーの再臨を期待するハーレイやジョーカー支持者たちが、アーサーにもう一度ジョーカーが宿ることを期待する姿に表現されています。(続く)


※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。
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葛生賢治

哲学者。早稲田大学卒業後、サラリーマン生活を経て渡米。ニュースクール(The New School for Social Research)にて哲学博士号を取得した後、ニューヨーク市立大学(CUNY)をはじめ、ニューヨーク州・ニュージャージー州の複数の大学で哲学科非常勤講師を兼任。専門はアメリカンプラグマティズム、ジョン・デューイの哲学。現在は東京にて論文執筆、ウェブ連載、翻訳に従事。ウェブでは広く文化事象について分析を展開。




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