キム・ホンソンの三味一体
vol.224 寄留者を自分自身のように愛しなさい
2025-04-04
先日ワシントンポストに現政権の新しい移民政策によって不法滞在者だけでなく、合法滞在者の間でも国外退去に対する不安が募っているとの記事がありました。実際、これまで永住権所持者を国外退去しようと試みたり、アメリカに入国する際に移民局によって拘束され移民権放棄の書類にサインするように要求されることがあったようです。いずれも親パレスティナ活動に関わっていて現政権に批判的な人々だったり、または過去に飲酒運転の前科があったりとそれなりの理由はあるようですが、それでも多くの永住権者は不安を覚えて当然だと思います。犯罪歴が全然ない場合でも、過去にSNSで現政権に対して何か批判的なことを書いたことがあったのか、と不安になって思わず自分の過去のポストをチェックしてしまうような自己検閲をする人が増えてもおかしくありません。本当に世知辛い世の中になったというか、もう自分が知っていたアメリカではなくなってしまったような気がして悲しくなります。
日本でもニュースになっていましたが、今の政権の支持層の一つにキリスト教福音派と呼ばれるグループがあります。聖書の言葉を文字通りに信じようとしたり、物事を決めつけて判断しようとしたりと個人的にはやや同意できない傾向もあるグループですが、同時にとても信仰熱心で良い印象もあります。だからこそできれば以下の聖書の言葉を文字通り信じていただいて、現政権へと移民政策の助言をしていただけたらと願って止まないのです。
「寄留者があなたの土地に共に住んでいるなら、彼を虐げてはならない。あなたたちのもとに寄留する者をあなたたちのうちの土地に生まれた者同様に扱い、自分自身のように愛しなさい。なぜなら、あなたたちもエジプトの国においては寄留者であったからである。」(レビ記19章33節〜35節)
最後の“なぜなら”の“エジプト”のところを“アメリカ大陸”に置き換えると、かつてネイティブアメリカンの人々のところに身を寄せて寄留者となっていた“自分自身”を思い起こすことができるのではないかと思うのです。相手が自分とどれだけ異なっているとしても、共に住んでいるのであれば自分自身のように愛しなさい、と命じる神がいることを知ることは大きな慰めです。
※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。

