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コラム

ピアノの道
vol.142 舞台芸術のパワー

2024-11-29

リトル東京の一角にあるUnion Center for the Artsで活動するEast West Playersという劇団を皆さんご存知でしょうか。1965年に、アメリカ初のアジア系プロ劇団として創立されて以来「東洋にルーツを持つ舞台芸術家の活動の場を広げ、東洋と西洋の相互理解を深める」ことを目的として始まったこの劇団。「変革を触発する演劇で差別を払拭した世界を(Inspire and advocate for a world free of discrimination through transformative theater)」目指しています。

このEast West Playersが12月8日まで上演しているのが、スティーブン・ソンドハイムが作詞作曲したミュージカル「Pacific Overture(邦題:太平洋序曲)」。1853年の黒船の出現から明治維新・廃刀令くらいまでの歴史の展開が、加山栄左衛門(ペリー艦隊との交渉に当たった浦賀奉公)とジョン・万次郎や阿部正弘を始めとする、様々な立場の日本人の視点から語られます。物語の起承転結よりも歴史の複雑さ、視点の多様性、そしてそれを一つの物語にまとめることの不可能性に焦点があたるこの作品。舞台装置・衣装・振付・照明デザイン・髪・メイク・邦楽・投影イメージなど全てがアジア系、あるいは東洋文化を専門的に勉強した方々の渾身の作。演出のために誇張や現代化があったとしても解釈として楽しめるものばかり。特に投影イメージはあっぱれ!舞台という限りある空間に無限の夢の時空を演出する魔法のようなできでした。

フィナーレの「Next!」という歌では、近代日本の目覚ましい発展ぶりが次々と紹介され、私は日本愛で心が満タンになってしまったのです。第二経済大国となった1968年から大谷のドジャーズ入団まで、ピカチューや、鬼滅の刃や、草間彌生や、パリオリンピックの新種目ブレーキングで金メダルを獲得したAmiや、宮崎駿などなどが、みんな一目で誰だかわかる格好をして舞台狭しとみんなで楽しそうに踊ってるんです。もう一つ嬉しかったのは非アジア人が過半数の観客が桟敷席まで満席で拍手喝采していたこと。12月8日まで延長公演が決定しています。お見逃しなく!

この記事の英訳はこちらでお読みいただけます。


※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。
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平田真希子 D.M.A. (Doctor of Musical Arts)

日本生まれ。香港育ち。ピアノで遊び始めたのは2歳半。日本語と広東語と英語のちゃんぽんでしゃべり始めた娘を「音楽は世界の共通語」と母が励まし、3歳でレッスン開始。13歳で渡米しジュリアード音楽院プレカレッジに入学。18歳で国際的な演奏活動を展開。世界の架け橋としての音楽人生が目標。2017年以降米日財団のリーダーシッププログラムのフェロー。脳神経科学者との共同研究で音楽の治癒効果をデータ化。音楽による気候運動を提唱。Stanford大学の国際・異文化教育(SPICE)講師。

詳しくはHPにて:Musicalmakiko.com




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