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コラム

ピアノの道
vol.139 核兵器廃絶への世界の願い

2024-10-18

「忘れたいと思えば思うほどよみがえってくる。忘れてはいけないことなんだ、無かったことにしてはいけないんだとやっと気が付いた。」15歳の時に広島で被爆し、亡くなった下級生たちを火葬までした体験を語り続けてきた切明千枝子さん(94)の言葉です。

「日本原水爆被害者団体協議会」(日本被団協)のノーベル平和賞受賞は被爆の悲惨を世界に訴え続けた被爆者たちへの評価であると同時に、核兵器拡散や使用はこれら被爆者の努力をないがしろにする非人道だという警告でもあります。かくいう私も被爆者を祖父に持ちながら、2023年にランド研究所の「現世の最大の危機は環境汚染よりも核兵器だ」との発表を知るまで核兵器の脅威を歴史とSFのお話と感じていました。

Doomsday Clock(終末時計)をご存知ですか?核戦争などによる人類滅亡を「午前0時」とし、滅亡までの危険性を残り時間として表現する「原子力科学者会報」の表紙絵です。第二次世界大戦中、核兵器を完成させたアメリカの「マンハッタン計画」に携わった科学者たちが自らの社会的責任の認識の体現として1947年に始めて以来、現在まで続いています。原子爆弾を上回る破壊力の水素爆弾が開発された1953年には2分前まで近づくも1991年の冷戦終結で17分前まで回復した、その時計の針は今どこだと思いますか? …90秒前を指しているんです。

世界唯一の被爆国に生まれた在外日本人として我々ができること、なすべきことは何なのでしょうか。日本は被爆国であると同時に、人間の強さの象徴でもあります。原爆投下直後は「75年は草木も生えぬ」と言われた広島は、1949年には平和記念公園の整備を始め、奇跡と言われた戦後の日本高度経済成長と共に復興し、去年はG7の会場にもなりました。人間は過去の過ちの反省を基に成長する知性と人道をもっています。「無かったことにしていけない」のは過去の被爆の悲惨な記憶だけではなく、未来の核爆弾による破滅の可能性も同じです。

この記事の英訳はこちらでお読みいただけます。


※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。
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平田真希子 D.M.A. (Doctor of Musical Arts)

日本生まれ。香港育ち。ピアノで遊び始めたのは2歳半。日本語と広東語と英語のちゃんぽんでしゃべり始めた娘を「音楽は世界の共通語」と母が励まし、3歳でレッスン開始。13歳で渡米しジュリアード音楽院プレカレッジに入学。18歳で国際的な演奏活動を展開。世界の架け橋としての音楽人生が目標。2017年以降米日財団のリーダーシッププログラムのフェロー。脳神経科学者との共同研究で音楽の治癒効果をデータ化。音楽による気候運動を提唱。Stanford大学の国際・異文化教育(SPICE)講師。

詳しくはHPにて:Musicalmakiko.com




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