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コラム

マイ・ワード・マイ・ヴォイス
vol.47 亀裂(3)

2024-05-03

 私たちが理性を駆使すればいつか世界のありのままの姿を知ることができるという考え方。これがそもそも間違っていたら?「そんなバカな。目の前にあるこのコップがコップでないとでも言うの?」と言いたくなる人もいるでしょうか。でもこの指摘は的外れです。確かに、目の前にコップがあるとして、それをコップと認識することには何も問題ありません。でもそれが「世界のありのままの姿」を見たことになるのでしょうか。

 「世界のありのままの姿を見る」にはいくつかの条件が存在します。まず「世界のありのまま」がある。そして私たちがいる。そして私たちの「心」と呼ばれるものが世界のありのままを正しく写す鏡として機能する。それで初めて世界のありのままの姿を「見る」ことになる。では果たして、「心」は鏡のようなものなのでしょうか?ここでの「心」は「意識」と言い換えてもいいでしょう。世界と私たちの間にあるフィルター、もしくはスクリーンのようなもの。そこに写るものは様々です。目の前にあるコップの姿、昨日会った友人の顔、嫌なことを言われた時のムッとした気持ち、箪笥の角に足の小指をぶつけた時の痛み、等々。それらは意識の中に存在するコンテンツのように思えます。でも、私たちが「意識」と呼ぶものにまつわる様々な出来事は全て脳の活動に置き換えられることも事実です。

 例えば、誰かに褒められて嬉しくなったとします。私は「嬉しさ」を意識する。つまり、私の意識に「嬉しさ」というものが現れる。でも、脳科学の観点から言えば、脳の中の一部の神経が特定の反応をしているだけです。同じように、「痛み」はXXという神経が反応している、「昨日会った友人の顔」はYYという神経が、「目の前にあるコップ」はZZという神経が反応している、と。驚異的に発達したテクノロジーがあれば、または「意識」というものを一度も思いつくことなく文明が発達した宇宙人であれば、「意識」にまつわる全ての出来事を脳の活動に言い換えることが可能です。「今日は暑いですねえ」の代わりに「今日はYX神経が反応していますねえ」という具合に。つまり、「鏡」なんて最初から存在しなかったことになります。                             (続く)


※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。
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葛生賢治

哲学者。早稲田大学卒業後、サラリーマン生活を経て渡米。ニュースクール(The New School for Social Research)にて哲学博士号を取得した後、ニューヨーク市立大学(CUNY)をはじめ、ニューヨーク州・ニュージャージー州の複数の大学で哲学科非常勤講師を兼任。専門はアメリカンプラグマティズム、ジョン・デューイの哲学。現在は東京にて論文執筆、ウェブ連載、翻訳に従事。ウェブでは広く文化事象について分析を展開。




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