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キム・ホンソンの三味一体
vol.199 憐れみこそ救いの基準

2023-12-01

　キリスト教では信仰を持つことで永遠の命が与えられる形で救われると教えられているのですが、実はその基準が明確だとはいえません。ユダヤ教となると神に選ばれ神の掟を守るイスラエルの民が救われるのですからそれこそ単純明快ですが、キリスト教ではちょっと事情が違うのです。そもそも信仰を持つというのは非常に主観的なことなので第三者が客観的に判断できるようなことではありません。確かに言えることは、救いというのは神自身の主権によって行われるものであって、誰一人として神に代わって救いの基準を断言できる人はいないということです。聖書の中にはキリストが再び降臨して最後の審判を行う様子が書かれています。全世界の人々を集め、キリストを信じる人々と信じない人々に分けて、信じる人々のみに天国を受け継がせるといった調子です。となると当然色々な疑問が湧き起こります。例えば、キリストを信じるも何も、一度もキリストについて伝えられることなく死んでしまった人たちはどうなるのか。生まれて間もなく病気や事故などで亡くなってしまった赤ちゃんをはじめ、信じるかどうかを決定する機会すら与えられなかった人々はどうなるのか、というものです。聖書にはそれに関する明確かつ細かい基準は書かれてないので結局のところ、神の領域のことを人間が知ることなどできない。ただ神に委ねるしかないのだ、ということに戻っていくのです。しかし、中には信じないで死んだ人々は絶対に救われないという主張と、信じないで死んだとしてもキリストの憐れみによって救われるという主張があります。私は後者の方を主張する一人ですが、その根拠はキリストの人となりにあります。

　聖書の中には、イエスが直接会ったことのなかった人々を、彼らを愛する人々・彼らの家族の信仰に免じて癒し、救った記事が多々あります。マタイによる福音書８章５節以下には、イエスが異邦人の百人隊長の懇願に答えて彼の僕を癒された出来事が、同じくマタイによる福音書１５章２１節以下には、カナンの女の願いに応えて彼女の娘から悪霊を追い出した出来事が、そして、ヨハネによる福音書４章４６節以下には、カファルナウムの王の役人の息子を癒し救ったことについて記されています。これらの例は、いずれも、本人達の信仰によるものではなく、イエスに会うこともなしに、イエスを信じることもなしに、あくまでイエスが彼らのことを愛する人々を憐んで癒し救いました。イエスの救いの基準は、あくまで憐れみなのです。

　キリストを信じないで亡くなった人々を偲ぶ私たちの悲しみと切なさと願いを、キリストはきっと憐れみ彼らを救うに違いない、と信じることができる人は幸いです。

礼拝：日曜日午前10時（ハンティントンビーチ）、日曜日午後２時（トーランス）
お問い合わせ：khs1126@gmail.com (310) 339-9635

※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。