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コラム

マイ・ワード・マイ・ヴォイス
vol.33 見極め(1)

2023-03-03

 先日、テレビ番組で興味深い場面を目にしました。戦国武将や古代遺跡や動物の骨格など、さまざまな分野で大人顔負けの専門知識を持つ10代前半の子供たちがジャーナリストの池上彰氏と一緒に社会や経済の仕組みについて学ぶ、という特別番組。子供たちはみな、自分が興味ある分野を深く掘り下げて既に豊富な知識を得ているだけあって、池上氏の解説にもスポンジが水を吸収するような理解度を示していました。

 番組の最後に子供たちから池上氏に質問するコーナーがあり、「数学の微分と積分を学ぶことにどんな意味があるのですか?」「日本人は学校で英語をかなり長く学ぶのに、何故ほとんどの人が英語を喋れないのですか?」「国語や数学の授業の数が社会よりも多いのは何故ですか?」といった素朴ながらも難しい質問に池上氏は一つひとつ丁寧に答えていました。

 私が興味深いと思ったのは、こうした素朴ながらも非常に重要な疑問、特に「勉強をすることの意味とは?」という疑問に納得のいく答えを差し出す大人が彼らの周りにいなかったこと。そもそも「みなさんが学校で勉強する意味とは〇〇です」と明確に説明してから新学期を始める学校はほとんど存在しないでしょう。私もそんな説明を受けたことは一度もありませんでしたし、親に聞いたところで「良い大学に入るため」「大人になってから困らないため」という誤魔化しに近い言葉しか返ってこなかったはずです。そう、ほとんどの人が目的をよく知らずに膨大な時間を勉強に費やし、ほとんどの教育関係者が明確に説明しないまま学生に勉強をさせ、社会全体が回ってきた。私が中高生だった80年代ならまだしも、現在もそれが続いている。非常に奇妙なことではないでしょうか。

 「そんな偉そうなことを言って、あなたは明確に答えられるとでも言うのですか?」という声が聞こえてきそうです。私ならこう答えます。「学校で勉強するのは、人生に生きる価値があるのかどうかを見極めるための道具を手に入れるためです」と。これは、例えば日本では中学校までが義務教育と定められていますから、義務を終えた高校生以上の学生に対して差し出す答えです。さて、どういう意味か。(続く)


※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。
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葛生賢治

哲学者。早稲田大学卒業後、サラリーマン生活を経て渡米。ニュースクール(The New School for Social Research)にて哲学博士号を取得した後、ニューヨーク市立大学(CUNY)をはじめ、ニューヨーク州・ニュージャージー州の複数の大学で哲学科非常勤講師を兼任。専門はアメリカンプラグマティズム、ジョン・デューイの哲学。現在は東京にて論文執筆、ウェブ連載、翻訳に従事。ウェブでは広く文化事象について分析を展開。




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