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コラム

ピアノの道
vol.98. 意外性を楽しむ音楽

2023-02-03

 音と音楽の違いって、何でしょう。
 
 自分の演奏経験や音楽修行や、音楽の認知心理学や生態音楽学などを照らし合わせて、今の私が思う単なる音以上の音楽とは「快楽を見出せる音のパターン」です。
 
 ではパターンを成す音は全て音楽かというと、違います。例えば道路工事のジャックハンマーの『ドドドドド』。パターンはあっても変化が無さすぎる上、快楽を見出すには音量が大きすぎる。一般的には騒音です。勿論、これは受け取り手によって変わります。例えば乗り物や機械が大好きな幼児や、道路工事夫さんに憧れる小学生には胸が躍る音かも知れない。こういう聴き手には『ドドドドド』は音楽に成り得ます。
 
 でも、音のパターンは単調すぎるとすぐに無意味になります。例えば飛び乗った電車。(ああ~間に合った~。)ガタンゴトン。音パターンの設立でまず人は安心します。ガタンゴトン。電車で眠くなるのは、最初は安心するこの聞きなれたガタンゴトンがすぐに退屈になるから。逆に小難しい講義や、理解できない外国語は、パターン認識が叶わず、こちらもまた眠くなります。認識可能なパターンの中に不意を突いた驚きの意外性を入れる。必ずしも美しくなくても良いけれど、知性と感性をくすぐり、その意味を考えさせる変化。音楽とはパターンと意外性の兼ね合わせで遊ぶ、発信者と受信者の間のコミュニケーションゲームとも言えます。
 
 MITやハーバード・スタンフォードなどの米名門校で最近音楽授業が盛んなのは、どうしてでしょうか。「世界のエリートはなぜ『美意識』を鍛えるのか?」で山口周氏は、過去に基づいたデータや価値観が参考にならない不透明性が高い未来を控えて「目の前でまかり通っている評価や判断基準を『相対化できる知性』」すなわち美意識が、これからのリーダーには必要だ、としています。現存のパターンを認識しつつ、意外性の到来を待ち受け、その挑戦を楽しみ、そして活かす。音楽の教養には、実は重要な人生訓があるのです。

この記事の英訳はこちらでお読み頂けます。


※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。
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平田真希子 D.M.A. (Doctor of Musical Arts)

日本生まれ。香港育ち。ピアノで遊び始めたのは2歳半。日本語と広東語と英語のちゃんぽんでしゃべり始めた娘を「音楽は世界の共通語」と母が励まし、3歳でレッスン開始。13歳で渡米しジュリアード音楽院プレカレッジに入学。18歳で国際的な演奏活動を展開。世界の架け橋としての音楽人生が目標。2017年以降米日財団のリーダーシッププログラムのフェロー。脳神経科学者との共同研究で音楽の治癒効果をデータ化。音楽による気候運動を提唱。Stanford大学の国際・異文化教育(SPICE)講師。

詳しくはHPにて:Musicalmakiko.com




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