受喜与幸 ~受ける喜び、与える幸せ~
vol.71 私たちが「永遠」をイメージできる理由2
2023-03-10
子どものころに感じた、生命を生かそうとする天の意思、自然の秩序の存在を、エントロピーの概念を学ぶにいたって、その秩序の存在を確信することになりました。エントロピーは秩序とは逆に、「崩壊する」ことを示す熱力学の概念です。
学問的に説明するとややこしいのですが、エントロピーとは要するに、万物は放っておくと秩序から無秩序に向かうことを表しています。
きちんと綴(と)じられている本が時間の経過とともにバラバラにほどけていくことはあっても、バラバラにほどけた本が―外から何らかの力を加えないかぎりは、元の形に綴じられ直すことはありません。
そのように、秩序あるものは無秩序に向かって、確定されたものは不確定に向かって、凝縮されたものは拡散に向かって、それぞれ進んでいくことを示す法則であり概念。簡単にいえば、エントロピーとはそういうものです。
しかし、理論上はそのとおりですが、実際の自然現象の中には必ずしもエントロピーの法則が当てはまらないような現象もあります。
たとえば、枯れた草が土に返って新しい生命のための肥料になる。あるいは地上の水が蒸発して雲となり、雨となってふたたび地上に注ぐといった、リサイクル(循環)の現象などは、万物がただひたすら壊れる過程を一方通行で進んでいくだけのものではないことを示唆しています。
生命というものを単位に考えてみても、壊れたものが修復、再生されたり、進行していた症状が改善されたりする、「秩序を保とう」とする反エントロピー的現象が多く見られます。
その生命のもつ不思議な力は、科学の枠ではとらえきれないものです。といって、前項で述べた命の息と同様、それは人間の体にあらかじめ備わっていながら、人間自身がつくり出したものでもありません。
であれば、その生命の原理や秩序をデザインし、コントロールしている「何か」がいる、ある。そう考えたほうが自然に思われてきます。
その何かとは何なのか、だれなのか。もうくり返すことはしませんが、世界にはたしかに崩壊を進める力もあるが、崩壊をリサイクルに変え、バランスよく食い止め、秩序を保とうとする力もまたたしかにあるのです。そして、その大いなる力によって世界に遍在するあらゆる生命は生かされているのです。
(次回に続く)
※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。

