受喜与幸 ~受ける喜び、与える幸せ~
vol.70 私たちが「永遠」をイメージできる理由1
2023-03-03
どこかぼんやりした、変わったところのある子どもだった私は、日常の中でよく、他の人はあまり不思議だとは思わない、自分だけの不思議に出くわすことがありました。
幼いころのあるとき、ハサミで紙を切っていました。切った紙をさらに小さく切る。それをさらに細かく切る。これをくり返していると、やがて紙はなくなってしまう。幼い私はそう信じ込んでいたのです。
でも、いくら切っても紙が消滅してしまうことはない。この〝科学的事実〟を知ったときの驚きといったら、しばらく口がきけないほどでした。
燃焼という現象についても同様でした。ものを燃やすと、その物質は煙となってこの世から消えてしまう。そうとばかり思っていたのに、エネルギー保存の法則によって、燃焼物はなくなるのではなく、他の物質に姿を変えるだけだ。この事実も、私にショックを与えるのに十分でした。
中学から高校へ進むころに考えたのは、本書の最初のほうで書いた、価値と価格が反比例する自然の仕組みです。
人間が生きていくのにいちばん必要で大切なものは何か。まず、空気だろう。それから水だな。次に食べ物で、その次に……と生命の生存に必要なものを指折り順番にあげていったのです。
すると、必要度が高いもの、価値の高いものほど、手に入れやすく、値段も安いことに気づきました。大切なものほど手に入れにくいはずと考えていた私は、実際にはその逆であることが、やはりとても不思議に感じられたのです。
いま思い返してみると、これが「生命は生かされている」ことを知った最初のきっかけであったかもしれません。
必要なもの、大切なものほど手に入れやすい環境によって、生命はいつも生きるほうへと促されている。そうであるように最初からつくられている……その〝事実〟を理解して、そこに私は生命を生かそうとする天の意思、自然の秩序のようなものを感じたのです。
(次回に続く)
※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。

