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コラム

受喜与幸 ~受ける喜び、与える幸せ~
vol.57 神様は単純さが好き2

2022-11-25

 ゴールにたどり着くには、地道に同じことをコツコツくり返す単純さや、ゆっくり進むことを厭(いと)わないおおらかさみたいなものが必要だったのではないかと私は思っています。なぜなら神様に最後の仕上げをまかせられてきた人々の中に、そのようなパターンが見られるからです。このことについてお話しするために、鎌形(かまがた)赤血球症の新薬開発のプロセスをたどってみたいと思います。

 体内で生成されるNADという物質が鎌形赤血球症の治療の鍵(かぎ)になることは以前にもお話ししましたが、NADをいかにして体内でたくさんつくらせるか、どんな物質を与えればNADの生成が促進されるのか。その物質を探し出すことが私の研究テーマになりました。

 私の仕事は、大量の過去の文献をもう一度ひもとくという地道な作業から始まりました。そうしてあらゆる仮説を消していくという「ひらめき」などというものからはほど遠い方法で、最後に「グルタミン」という物質にたどり着いたのです。

 しかし、グルタミンは、研究者にとってはもっとも身近な物質でした。一周回っていちばん近いところへ戻ってきたというわけです。

 グルタミンは、細胞の代謝に必要な物質です。たとえば、どのような細胞を使う実験であっても、ペトリ皿の上で細胞を繁殖させるときは、グルタミンを投与して、代謝を助けます。

 研究をさかのぼっていくと、驚くべきことに、NADの量を体内で変えるという実験は、一九四〇年代から行われていました。しかも、その研究論文にはNADの生成には、ニコチン酸とグルタミンが必要だということが、ちゃんと書かれてありました。でも、その研究でNADを増やす実験材料に研究者が選んだのは、「ニコチン酸」のほうでした。

 ペトリ皿で起こることが人体にも起こるということを、イメージできなかったのでしょうか。研究者には、まったく注目されなかったこのグルタミンですが、臨床医でもある私にとっては、「薬」としても身近な存在でした。私はがんの専門医でもありますが、抗がん剤治療を受ける患者さんの副作用を抑えるために、グルタミンを処方することがあったのです。

 ですからNADの生成のために、グルタミンを使ってみようと思うのはごく自然なことでした。それが、まさか、史上初の快挙であるといわれるとは、正直なところ思ってもいなかったのです。私は、過去の実績をひたすら地道に追い、その過程でグルタミンの可能性に気づいたにすぎません。

 次回に続く。


※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。
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新原豊

新原 豊(にいはら・ゆたか)
1959年東京生まれ。ロマリンダ大学宗教学部卒、同大医学大学院卒。1989年よりUCLAハーバー総合病院にて血液内科と腫瘍内科に所属。ハーバード大学で公衆衛生学修士課程を修了。2005年よりUCLA医学部教授に就任。Emmaus Life Sciences, Inc. 会長兼CEO、EJホールディングス㈱ 取締役会長。Emmaus Life Sciences, Inc. の株式シンボルは、”EMMA” です。




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