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コラム

受喜与幸 ~受ける喜び、与える幸せ~
vol.51 悪を減らすより、善を増やす1

2022-10-13

 何回かにわたりご紹介しておりますが、ゼレーズ先生は、鎌形赤血球症の新薬開発において私に多くのアドバイスをくださいました。彼からもらった大きなヒントがもうひとつあります。それは「悪を減らすよりも善を増やす」という考え方です。
 
 先述のとおり、グルタミンを鎌形赤血球に注入すると、最初からすごい速度で鎌形赤血球がグルタミンを吸い込んでいくことが確かめられました。
 
 「なぜ、病気の細胞がこんなにグルタミンを欲しがっているんだ?」―そう疑問に思いましたが、答えはひとつしか考えられません。NADをつくるためです。
 
 ただ、ひとつ問題がありました。細胞内のNADにも酸化されたものと還元されたものの二種類があって、ふたつが混在しながらバランスをとっているのですが、外からグルタミンを加えると、この両方ともが増えてしまうのです。
 
 体への影響から考えて、酸化されたものを悪、還元されたものを善とすれば、グルタミンを加えることで善と悪の両方が増加してしまう。このとき善の効果を最大にして、悪の影響を最小にするには、グルタミンの注入加減をどうすれば、もっとも効果的かが課題となりました。
 
 医学的にはもっと複雑な話なのですが、簡単にいってしまえば、振り子のおもりをどうつければ全体のバランスをとれるか、そういう問題に直面したのです。いまも記憶に鮮明ですが、私はゼレーズ先生とふたりだけで遅い夕食に立ち寄ったロサンゼルスのメキシコ料理店で、その疑問をぶつけてみました。
 
 「ユタカ、きみはどう考える?」
 
 先生はたいへん謙虚な人柄で、少しでも自分の能力を誇るようなことはしない人物です。そのときも温顔を崩さず、そう聞き返してきました。
 
 私は「悪を減らす」ほうに重点を置くことを提案しました。すなわち、グルタミンの注入量を抑えることで酸化NADの数量も下げる。それによってNADの善的な効果(リドックス・ポテンシャル)を相対的に向上させる。
 
 分数でいえば、分子はそのままに分母を減らすことで、善的な効果を大きくする方法を選ぼうとしたのです。しかし、先生の提案は私とは正反対でした。

 次回に続く。


※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。
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新原豊

新原 豊(にいはら・ゆたか)
1959年東京生まれ。ロマリンダ大学宗教学部卒、同大医学大学院卒。1989年よりUCLAハーバー総合病院にて血液内科と腫瘍内科に所属。ハーバード大学で公衆衛生学修士課程を修了。2005年よりUCLA医学部教授に就任。Emmaus Life Sciences, Inc. 会長兼CEO、EJホールディングス㈱ 取締役会長。Emmaus Life Sciences, Inc. の株式シンボルは、”EMMA” です。




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