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コラム

受喜与幸 ~受ける喜び、与える幸せ~
vol.49 小さなことの積み重ねが実を結んだ瞬間1

2022-09-30

 鎌形赤血球症は遺伝子に異常の起こる病気ですから、その根治のためには当然、遺伝子レベルの治療が必要になってきます。すなわち、傷ついた遺伝子を健常なものに取り替えるか、ヘモグロビン全体を正常なものと入れ替えるかする根源的な方法ということです。これは考え方としては正しいもので、私も最初はそうすべきだと思っていました。

 遺伝子病なのだから遺伝子治療で対応すべきだし、そのような根本的な治療をほどこしたいとも考えていたのです。しかし、それは科学的には正論でも、現実には不可能に近いことでした。なぜなら正常な遺伝子をつくることができても、当時の研究水準では、それを細胞に入れる技術や方法がほとんど確立されていなかったからです。

 そこで私は、その遺伝子を細胞の中に入れる方法を一から研究してみることも考えました。でも、それはウイルスを使う、患者の体に負担をかけなければいけない方法であり、また莫大(ばくだい)な費用がかかるわりには成果の見通しも不透明なものでした。つまり、鎌形赤血球症の場合、遺伝子レベルからの根本治療はいまのところまだむずかしいという現実に突き当たってしまったのです。

 ここでまたゼレーズ先生に相談すると、「鎌形は遺伝子の病気だけれども、赤血球細胞をダメにしているいちばん大きなメカニズムは、酸化現象である」ことをまず私に教えてくれました。

 酸化は免疫系統に欠かせない現象ですが、それが赤血球細胞で過剰に行われた場合に、鎌形の症状が発生してしまう。だから、過剰な酸化を抑えてやれば、遺伝子レベルの根治は無理でも、病気の症状の緩和や抑制には大きな効果を発揮する。

 遺伝子は治せなくても酸化なら防げる。遺伝子の異常は治せなくても、遺伝子異常によって起こる問題を緩和することはできる―そういう対症的な原理をゼレーズ先生が私にあきらかにしてくれたのです。

 糖尿病などでも、病気が進んですい臓からインスリンが出なくなってしまった人を治すことはむずかしいものです。インスリンの分泌機能を根本から治療することはいまの医学では無理なのです。

 でも、外からインスリンを注射して、その症状の進行を食い止めたり改善したりする対症療法なら十分な効果が見込めます。それと同じことが、赤血球の酸化を防ぐことによって鎌形の病気にも効果を発揮します。

 次回に続く。


※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。
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新原豊

新原 豊(にいはら・ゆたか)
1959年東京生まれ。ロマリンダ大学宗教学部卒、同大医学大学院卒。1989年よりUCLAハーバー総合病院にて血液内科と腫瘍内科に所属。ハーバード大学で公衆衛生学修士課程を修了。2005年よりUCLA医学部教授に就任。Emmaus Life Sciences, Inc. 会長兼CEO、EJホールディングス㈱ 取締役会長。Emmaus Life Sciences, Inc. の株式シンボルは、”EMMA” です。




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