NIKKAN SAN 2021-01-05

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コラム

マイ・ワード・マイ・ヴォイス
vol.27 システム

2022-09-02

 生前のロックミュージシャン・内田裕也氏が登場する興味深い日本のテレビCMを目にしたことがあります。CGで合成された無数の内田氏がトレードマークの金髪にサングラス姿で一斉に「ロッケンロール!」と言いながらベルトコンベアーで運ばれている。その中に1人だけ短い黒髪にメガネ、スーツ、ネクタイ姿のサラリーマン風内田氏が混じっている。「ロッケンロールの中に、ひとりだけロックじゃない奴」と説明が入ると、内田サラリーマンを機械が検出して排除。「異物」を「排除」する精巧な技術を強調してその機械メーカーのCMは終わります。

 かつて欧米を中心にカウンターカルチャーが花開いた60年代後半、ロックは社会的権威に抗う若者の象徴でした。サングラスも長髪も、大人のルールに従わず、政治体制、社会の工業化、管理体制化にNOといい、システムに取り込まれない自由でクールな生き方の表れであり、ベルトコンベアーからドロップアウトする精神こそが「ロック」だった。

 では、皆が同じサングラスと金髪で「ロッケンロール!」と唱えながら運ばれ、「異物」が排除される光景は果たして「ロック」でしょうか?この企業のCMを批判しているわけではありません。これは非常に優れた現代社会のメタファーだと思います。「大人vs若者」「権力による抑圧vs自由のための反抗」という単純な対立はもはや成立しない。かつての若者は大人となり、自由主義、新自由主義、自由貿易、金融自由化など「自由」のシステムが「権力」の座につき、なぜか前代未聞の格差を広げ続ける社会。

 排除されるサラリーマン内田氏は何を象徴しているのか?2種類の不安です。1つ目はグローバル資本主義の中で落ちこぼれる(99%になる)不安。2つ目は無数の金髪サングラスの「ストレンジャーたち」に対する不安、つまりグローバル化で国家間を人や労働力が行き交い、「よそ者たち」が自分の仕事、地位、アイデンティティーを脅かす不安。前者は左派ポピュリズムの、後者は右派ポピュリズムの原動力となります。そう考えると、いま私たちが目の当たりにする社会の分断とは、ベルトコンベアーで「自由」を次々と生み出すシステムの副産物なのかもしれません。


※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。
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葛生賢治

哲学者。早稲田大学卒業後、サラリーマン生活を経て渡米。ニュースクール(The New School for Social Research)にて哲学博士号を取得した後、ニューヨーク市立大学(CUNY)をはじめ、ニューヨーク州・ニュージャージー州の複数の大学で哲学科非常勤講師を兼任。専門はアメリカンプラグマティズム、ジョン・デューイの哲学。現在は東京にて論文執筆、ウェブ連載、翻訳に従事。ウェブでは広く文化事象について分析を展開。




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