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コラム

受喜与幸 ~受ける喜び、与える幸せ~
vol.26 生命は楽しむためにある2

2022-04-22

 前回の続きになります。人間に備わっている味覚についてです。食事が生命維持を目的とするならば、様々な味を感じることは必要ないはずです。

 ところが、どういうわけか人間の舌にはとても複雑で繊細な感覚が与えられています。そして、その味覚を満足させるためにわざわざ手間やお金をかけておいしい食事をつくったり、食べたりします。

 なぜ、そんなことをするのでしょうか。それは人間が生きるためだけに食べている存在ではないからです。食事には生存のための栄養摂取という以上の意味や目的がある……味覚はその事実を明示しているのです。

 では、その生存以上の意味や目的とは何なのか。それは、できるだけ快適に、できるだけ楽しく生きるということです。

 ものをおいしく食べているとき、私たちは大きな楽しみや深い喜びを感じることができます。「このクリームシチューはなんて美味なんだろう」「今晩は家族ですき焼き鍋(なべ)を囲もう」―。そんなふうに感じ、考えるときの楽しさはあきらかに人生の幸せな瞬間のひとつに属します。

 あるいは、長い闘病生活のあとで健康体を取り戻し、温かいご飯とみそ汁、焼き魚に漬け物といった、ごく普通の食事をゆっくり咀嚼(そしゃく)しながらしみじみと味わうとき、体の奥底から健康のありがたみ、生きている喜びがふつふつとわいてくるでしょう。

 つまり、食事という行為を機械的な栄養摂取の手段から、食べる楽しみや生きる喜びに変えてくれる感覚。舌に備えられた幸福の感知センサー。それがすなわち味覚なのです。

 いうまでもなく、私たちは食べなければ死んでしまいます。食事は生命が存在するために欠かせない必要最低限の行為ですが、その基本行為においても、味覚が与えられているおかげで、私たちは「おいしさ」を感じることができ、その感覚を通じて生きる喜びや楽しみを味わうこともできます。

 生存の絶対条件ではないにもかかわらず、味覚という機能が人間の体にちゃんと備わっている……その事実は、生命がただ単に「命」をつなげていくだけの存在ではなく、現在ただいまの生をより幸せに、より楽しんで生きるようにあらかじめつくられた、祝福された存在であることを示しているのです。


※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。
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新原豊

新原 豊(にいはら・ゆたか)
1959年東京生まれ。ロマリンダ大学宗教学部卒、同大医学大学院卒。1989年よりUCLAハーバー総合病院にて血液内科と腫瘍内科に所属。ハーバード大学で公衆衛生学修士課程を修了。2005年よりUCLA医学部教授に就任。Emmaus Life Sciences, Inc. 会長兼CEO、EJホールディングス㈱ 取締役会長。Emmaus Life Sciences, Inc. の株式シンボルは、”EMMA” です。




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