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コラム

キム・ホンソンの三味一体
vol.169 「無駄」と「犠牲」

2022-04-14

 聖書の中にイエスの足に当時300日分の労働賃金に価するほど高価な香油を塗ったマリアという女性の話しがあります。当時のユダヤには客の足を洗う習慣がありました。マリアは、旅をして自分の家に訪れたイエスの足を水ではなく高価な香油を塗ってもてなしたのです。それはマリアのイエスへの感謝の気持ちの表れでした。実は過去にイエスが病死したマリアの弟を生き返らせてくれたからです。しかし、そばでそれを見ていた弟子のユダは、その高価な香油を売って貧しい人々に施すべきだったとマリアを非難したのです。そのユダの一言で周辺の雰囲気は一変しました。他の弟子たちも全員マリアの行為に憤ったと書かれています。

 どのような時代においても、「貧しい人に施しをすること」は間違いなく善行であると信じられています。それに比べて「無駄遣い」というのは、どう見ても否定的なものとしか思えないのが、私達の限られた善悪の概念ではないでしょうか。しかし、マリアのこの感謝の行為が非難され、無駄な、無意味なことと決めつけられそうになった時、イエスは神の愛の視点から、その行為に豊かな意味を与えました。「この人のするままにさせておきなさい。わたしの葬りの日のために、それを取っておいたのだから。貧しい人々はいつもあなたがたと一緒にいるが、わたしはいつも一緒にいるわけではない。」イエスは、マリアの行為を、人々の罪を代わりに背負って十字架の上で自分の命を犠牲にしようとする自分への励ましであり、慰めであると受け取ってくれたのです。

 私達は、無駄なことが嫌いです。少しの回り道も避けようと努力し、少しの無駄骨も耐えることができません。無駄は現代社会の合理主義、効率主義の敵であり、利潤追求の障害だからです。しかし、イエスは、誰かへの感謝の思い、愛の思いに基づいて行なった行為を、たとえそれが無駄に見えるとしても、無駄ではなく犠牲だとしたのです。犠牲は貴いものです。つまらぬ雑用も、徒労に終わった努力も、空しく過ぎた時間も、無視された厚意も、用をなさなかった準備も、報われなかった忍耐も、それが自分の利益のためでなく、誰かのための行為だったなら、それはけして無駄ではなく、意味ある犠牲だと認めてくれる存在がいると知ることは大きな慰めです。

礼拝:日曜日午前10時(オレンジ・カウンティ)、日曜日午後2時(トーランス)
お問い合わせ:khs1126@gmail.com (310) 339-9635


※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。
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キム・ホンソン

牧師、コラムニスト、元ソーシャルワーカー、日本人の奥さんと3人の子供達に励まされ頑張る父親。韓国ソウル生まれ。中学2年生の時に宣教師であった両親と共に来日。関西学院大学神学部卒業後、兵役のため帰国。その後、ケンタッキー州立大学の大学院に留学し、1999年からロサンゼルスのリトル東京サービスセンターでソーシャルワーカーとして働く。現在、性的マイノリティーをはじめすべての違いを持つ人々のための教会、聖霊の実ルーテル教会 (Torrance) と復活ルーテル教会日本語ミニストリー(OC, Huntington Beach)を兼牧中。

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