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コラム

ピアノの道
vol.77 音楽が呼び覚ます人間性

2022-03-18

 音楽をやっていると不思議なことが色々あります。

 バッハが生れたのは1685年。ベートーヴェンは1770年。ショパンは1810年です。ピアニストが主に弾く作曲家というのは200年とか300年前の人なんですよね。でも作曲家がどういう想いでそのメロディーや曲を書いたのか、弾きながら瞬間的に分かる時があります。「分かる」というより「繋がる」と言った方が近いような感覚です。勿論、曲の解釈を掘り下げていくプロセスの中で、その曲の時代背景やその時の作曲家の人生状況などを調べる「役作り」の様なリサーチもします。でも、それ以上の不思議な感覚なんです。

 他にも不思議なことがあります。

 演奏中に会場の雰囲気を体感する事があるんです。和音の変化で会場の温度が変わったように感じる瞬間。音量やリズムやテンポがグワ~っとクライマックスに向かって興奮度を増していく中、会場全体の呼吸の速度が一緒に早くなっていくような感じ。最後の和音が消え行ってから拍手が始まるまでの時間が停まったような数秒。多くの場合、私は聴衆のほとんどを個人的には知りません。でもそういう瞬間、私は会場にいる一人一人を抱きしめて泣きたい—そんな風に感じる一瞬なのです。

 音楽はオキシトシンの分泌を促します。出産直後のお母さんが大量に分泌し、俗に「愛情ホルモン」と呼ばれます。声を合わせて歌ったり、一緒に音楽を聴いたり、音楽に合わせて体を動かしたりとすると生まれるこの一体感。これは人間の自然現象なんです。

 ウクライナから色々な音楽の動画が発信されています。爆撃を避けて地下で生活するヴァイオリニストやピアニストの演奏。子供の歌声。爆弾でめちゃくちゃになったアパートを見渡しながら、避難民生活を始める前に最後に自分のピアノでショパンを奏でる女性の動画。侵攻が始まってから一か月が経とうとする今、被害者の一人一人が世界に「私たちも人の子だということを忘れないで」と訴えかけているように思えます。

この記事の英訳はこちらでお読み頂けます。


※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。
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平田真希子 D.M.A. (Doctor of Musical Arts)

日本生まれ。香港育ち。ピアノで遊び始めたのは2歳半。日本語と広東語と英語のちゃんぽんでしゃべり始めた娘を「音楽は世界の共通語」と母が励まし、3歳でレッスン開始。13歳で渡米しジュリアード音楽院プレカレッジに入学。18歳で国際的な演奏活動を展開。世界の架け橋としての音楽人生が目標。2017年以降米日財団のリーダーシッププログラムのフェロー。脳神経科学者との共同研究で音楽の治癒効果をデータ化。音楽による気候運動を提唱。Stanford大学の国際・異文化教育(SPICE)講師。

詳しくはHPにて:Musicalmakiko.com




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