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コラム

マイ・ワード・マイ・ヴォイス
vol.21 秩序

2022-03-04

 子供の頃に「フルーツバスケット」というゲームで遊んだ方はいるでしょうか。複数の椅子を円状に並べ、「りんご」「バナナ」「みかん」などのグループに分けた人たちをバラバラに座らせる。椅子に座らない「オニ」がフルーツの名前を呼ぶと、そのグループの人たちが一斉に椅子から立って他の椅子に座わる。その隙にオニもどれかに座り、どこにも座れなかった一人が新たなオニになる。これを繰り返しますが、オニはフルーツではなく「フルーツバスケット!」と言うこともでき、そうすると全員が立って他の椅子に座らなければいけない。

 「なんで哲学なんてやっているんですか?」といった質問をされるたびに私はこのゲームを思い出します。確かに医学や化学、経済学といった学問と比べると哲学などの人文系学問は「役割」や「目的」がはっきりしない、と思う方も多いでしょう。明確な「役割」を持つとされる学問は個々のフルーツグループが移動する状態に、哲学は「フルーツバスケット!」で全員がわーっと移動する状態に知性を使うことだと私は考えます。りんごやバナナのグループなど特定の人たちがどこに座るかはパターンや確率から「正解」を導き出すことができるでしょう。でも「フルーツバスケット!」状態であればそれは極めて難しくなります。

 「それでもフルーツの種類は決まっているのだから、全員が移動してもパターンを見つけるのは不可能ではないだろう」と反論があるかもしれません。確かにそうです。ですからこの例えには限界があります。より正確には、哲学は「フルーツバスケット!」と皆が一斉に移動する際に椅子の数が増えたり、新たなフルーツが加わったり、椅子が2人がけになるなどしてそもそもパターンの想定が意味をなさなくなること。そこで知性を働かせることだと思います。

 世界の中のある部分に対してデータを集め、実験を繰り返し、結果を分析して理解するのではなく、「世界」の枠組み自体をこれまでにない仕方で理解する。国際政治の舞台でいま起きていることを見れば明らかなように、世界秩序が「フルーツバスケット!」となっている今こそ、この種類の理解が強く求められていると思えてなりません。


※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。
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葛生賢治

哲学者。早稲田大学卒業後、サラリーマン生活を経て渡米。ニュースクール(The New School for Social Research)にて哲学博士号を取得した後、ニューヨーク市立大学(CUNY)をはじめ、ニューヨーク州・ニュージャージー州の複数の大学で哲学科非常勤講師を兼任。専門はアメリカンプラグマティズム、ジョン・デューイの哲学。現在は東京にて論文執筆、ウェブ連載、翻訳に従事。ウェブでは広く文化事象について分析を展開。




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