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コラム

マイ・ワード・マイ・ヴォイス
vol.20 啓発

2022-02-04

 ニューヨークに住んでいた頃、友人から「すごくためになるセミナーがあるんだけど、来てみないか?」と誘われたことがあります。それは自己啓発セミナーで、アメリカでも名の知れた団体が主催していました。自己啓発は英語ではself-helpやself-development。そもそも自分をhelpしてdevelopする方法を他人から教わる段階で矛盾ではないのかと常々思っていたので、いろんな意味で面白そうだと思い、参加してみました。

 私の友人はその団体の会員らしく、会場には同じように会員とその会員に誘われてきた友人というペアが多くいました。講師はホワイトボードの前で「どうすればなりたい自分になれるのか」「欲しいものを手に入れるには」など様々なメソッドを分かりやすく、和やかに、ジョークも交えながら縷々説明していきます。話もいよいよクライマックスに近づき、会場が「これなら成功しそうだ」「人生が変わりそうだ」「すごい未来が待っているぞ」という雰囲気に達したとき、それまでホワイトボードの端を隠していた白い紙が剥がされ、文字が出てきました。「Aコース:$◯◯◯」「Bコース:$XXX」という価格表。「では、今の話に興味がある方は週末に開かれる集中セミナーにご参加ください。価格はこの通りです」と講師。なるほどお。

 後日、その団体から電話がかかってきました(あえて電話番号を教えておきました)。「先日はご参加ありがとうございました。どうですか?いま何か手に入れたいものはありませんか?」やはり有料セミナーのお誘いです。私は本心から「そうですね。私は哲学者なので、真実を手に入れたいです」と答えました。電話の主は数秒の沈黙。「、、、あ、そうですか。ではまたの機会にご参加お待ちしています」と一方的に電話が切れました。
 
 せっかくのdevelopmentの機会を失ったのは残念でしたが、興味深い経験でした。セミナーが叶えてくれるという「手に入れるもの」と私のいう「真実」との違いは何でしょう。真実とはそれが何かは分からないけど、分からないがゆえに求めるものではないでしょうか。他人からメソッドを教わることが決してできない。だからこそ、求めてしまうもの。その求める姿勢のなかに啓発が存在する気がしてなりません。


※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。
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葛生賢治

哲学者。早稲田大学卒業後、サラリーマン生活を経て渡米。ニュースクール(The New School for Social Research)にて哲学博士号を取得した後、ニューヨーク市立大学(CUNY)をはじめ、ニューヨーク州・ニュージャージー州の複数の大学で哲学科非常勤講師を兼任。専門はアメリカンプラグマティズム、ジョン・デューイの哲学。現在は東京にて論文執筆、ウェブ連載、翻訳に従事。ウェブでは広く文化事象について分析を展開。




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