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コラム

受喜与幸 ~受ける喜び、与える幸せ~
Vol.10 「むさぼリ」はがん細胞の特徴1

2021-12-24

 がん細胞を顕微鏡でのぞいたことのある人は少ないと思いますが、一度でもその経験をすれば、がんという病気の容貌(ようぼう)と性質の一致ぶりに驚かれるはずです。

 たとえば、がん細胞の群れを顕微鏡で拡大すると、視界いっぱいに同じ大きさ、同じ形をしたものがぎっしりと詰まって、邪悪な意思でももっているかのように秩序もなくうごめいています。思わず「ゾゾッ」と背中に寒気が走るような、そのぶきみな感じは、ちょっと形容しがたいものがあります。

 放っておけばひたすら増殖して、ついには自分の宿主さえ滅ぼしてしまう。そういうがんの危険な病質をそのまま形にしたように、とても不快な、そして不自然な外見をしているのです。

 ここでお伝えしたいのは、がんの患者さんがそうでない方以上にむさぼる心をもっているということではけっしてありません。実際に美しい心をもっている患者さんを私は何人も知っています。

 私がお伝えしたいのは、私どもすべてに影響を及ぼしている現代のぜいたくな生活習慣が、がんの原因になっているということです。そしてがん細胞が、まるで私たちの中にある、むさぼる心を投影したかのようなはたらきをしているということです。

 がんの性質について少し説明を加えておきますと、がん細胞というのは繁殖細胞のことです。がん細胞という特別な細胞があるわけではなく、途中までは正常だった組織の一部の細胞が再生や成長の途中で不良化してしまうのです。

 細胞の一生は、単細胞から分裂して幹細胞へ、幹細胞からそれぞれ固有の役割をもつ細胞へと分かれていきます。あるものは皮膚になり、あるものは筋肉をつくり、あるものは血液になり、といったぐあいに分化して、それぞれその個別の役目を果たして、やがて死んでいくのです。

 いわば、幼児期、繁殖期、成長期、衰退期といったプロセスを経るわけですが、このうちさかんに分裂、増殖をくり返す繁殖期―役割ごとに分化していく成長期の手前の時期―で成長が止まってしまった細胞のことを、がん細胞(細胞ががん化した)というのです。

 したがってがん細胞は、生涯にわたって職業に就く(役割を果たす)ことなく、体に有益なはたらきは何もしないまま、ただひたすら繁殖を続けることで栄養分をどんどん奪ってしまう〝暴走細胞〟のことなのです。

 生物の成長のために繁殖期は不可欠ですが、ある時期になれば、その繁殖にも自然にブレーキがかかります。でも、そのブレーキが壊れてしまって、その後もやみくもに繁殖をしつづける。

 その結果、体の中にがん細胞という悪貨が増えすぎて、良貨とのバランスがとれなくなり、やがて良貨を駆逐して、体全体の健康を損ねてしまう……。これががんという病気のメカニズムです。


※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。
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新原豊

新原 豊(にいはら・ゆたか)
1959年東京生まれ。ロマリンダ大学宗教学部卒、同大医学大学院卒。1989年よりUCLAハーバー総合病院にて血液内科と腫瘍内科に所属。ハーバード大学で公衆衛生学修士課程を修了。2005年よりUCLA医学部教授に就任。Emmaus Life Sciences, Inc. 会長兼CEO、EJホールディングス㈱ 取締役会長。Emmaus Life Sciences, Inc. の株式シンボルは、”EMMA” です。




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