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コラム

旅は呼んでいる。
vol.61 東京都 ~上野エリア~

2021-12-24

 リアル二刀流/ショータイム―ロサンゼルス・エンゼルスの大谷選手を表すワードが2021年の流行語大賞となった。今回はさすがに知っていたものの、見る度に時代の流れを感じる。新人類、オバタリアン等はよく聞いたがそれらは既に昭和の遺物だ。
 

 上野駅からすぐ、三ノ輪駅にある浄閑寺はかつて“投げ込み寺”と呼ばれた。吉原の遊郭で働いていた遊女達を、である。鮮やかな着物に美しく化粧を施して練り歩いた花魁道中のイメージが強く一見華やかな世界に見えるが、職業柄病気で亡くなることも多く、江戸時代に起きた大地震では身寄り無い遊女が多数葬られた。そうした無縁仏を祀った総霊塔と、結婚を目前に客に殺害された美女若紫の墓があり、明治時代の作家・永井荷風はそんな彼女らを不憫に思い度々寺を訪れたそうだ。今日でも女性の地位の向上や尊厳の回復を願い、供養に来る者が絶えない。
 

 また、歓楽街ゆえ天ぷらやふぐ料理など様々な飲食店が軒を連ねていた。明治38年創業で黒檀、紫檀といった高級木材が使われ国の有形文化財にも指定された“桜なべ中江”は外観もさることながら、店内に入るタイムスリップをした感覚に陥る。太陽の塔で有名な芸術家・岡本太郎が好んで食べ、その名にちなんだ名物メニュー“タロタロユッケ”は絶品、いいお値段だったが歴史を感じつつ美味しくいただいた。
 

 上野では朝の8時前に満員になる立ち飲み屋が何軒もあり、国内にいながらカルチャーショックを受けた。朝一番で成田空港に着き、都内まで移動したもののカフェやデパート、美術館も開いておらず手持ち無沙汰をしていた際に見つけ、暖を取れる喜びと、こんな時間から飲めるなんてと幸せに浸った。
 
 浄閑寺には永井荷風の詠んだ“震災”という詩碑が建てられており「私は明治生まれの人間だから、若い人に今の時代について聞かれてもその価値がわからない」と、過ぎ去った明治の文化や芸術を懐かしみ愛しむ内容だ。もうすぐ令和4年。昭和や平成初期が恋しいと感じる事が多いのでつい共感してしまう。


※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。
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加西来夏

職業:旅する映画ラヴァー。映画の聖地であり、年中カラっとした最高の気候…世界中を旅しているけど、やっぱりL.A.が大好きです。年間視聴映画100本以上、訪問39ヵ国~。好きな言葉は“世界は驚きと奇跡に満ちている”。ご意見はkasai.laika@gmail.comまで!




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