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コラム

ピアノの道
vol.70 耳は二つで口は一つ

2021-12-03

 手を胸の上の方に置いて「あー」と発声してみて下さい。手にびりびりと振動を感じませんか?それはあなたの持つパワーです。そのパワーを使って人を慰めることも社会を動かす事もできます。人と声を合わせることも、対立意見を述べることも、不和を調停する事もできます。

 しかし難しいのは何をどう発声するかという事です。インプットとアウトプットが同時には出来ないのはコンピューターも人間の脳も同じです。自分の発言にのみ集中していると、周りの意見や世界の風潮が聞こえなくなります。

 「Nature gave us one tongue and two ears so we could hear twice as much as we speak(自然が我々に一つの舌と二つの耳を授けたのは、喋る量の2倍聴くためだ)」

 奴隷に生まれ哲学者として偉業を成し遂げた古代ギリシャのエピクテタスの言葉です。完璧さを目指して練習し、そして演奏してキャリアを築くことに一生懸命になっていた若いころ、私には「聴く」という言葉の意味が分かっていなかった、と最近思います。音楽という言語を教え込まれながら、自分や周りに耳を傾ける術が無く、なぜ・何を・誰に向かって訴えたいのかが全く未知だった。

 感謝祭の前の週、サンフランシスコでピアノを乗せたバンを運転してホームレスや家庭内虐待の犠牲者や大学生などに音楽の治癒効果のトークと演奏を届ける活動をしました。この武者修行の一番の目的は統計としてしか知らなかった困窮者たちの声を聴くことでした。私の演奏への返答として、突き動かされるようにゴスペルやラップを披露してくれた人たち。「アジア人の私には教えられた西洋音楽しか無い。あなた達の様な音楽のアイデンティティが無いのです。羨ましい」と言ったら「そんなことは言わなくて良い。感じなくて良い。我々は皆同じ。だから音楽も皆同じなのです。」と言ってくれた黒人男性。涙が出ました。

この記事の英訳はこちらでお読みいただけます。


※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。
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平田真希子 D.M.A. (Doctor of Musical Arts)

日本生まれ。香港育ち。ピアノで遊び始めたのは2歳半。日本語と広東語と英語のちゃんぽんでしゃべり始めた娘を「音楽は世界の共通語」と母が励まし、3歳でレッスン開始。13歳で渡米しジュリアード音楽院プレカレッジに入学。18歳で国際的な演奏活動を展開。世界の架け橋としての音楽人生が目標。2017年以降米日財団のリーダーシッププログラムのフェロー。脳神経科学者との共同研究で音楽の治癒効果をデータ化。音楽による気候運動を提唱。Stanford大学の国際・異文化教育(SPICE)講師。

詳しくはHPにて:Musicalmakiko.com




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