HIS 10

ロサンゼルスの求人、クラシファイド、地元情報など

日刊サンはロサンゼルスの日本語新聞です。 記事は毎日更新、求人、クラシファイドは毎週木曜5時更新。

コラム

受喜与幸 ~受ける喜び、与える幸せ~
vol.2 シュバイツァーに憧れて医師の道へ

2021-10-29

 私が鎌形赤血球症の患者さんにはじめて出会ったのは、まだ医師として駆け出しだった二〇代のころでした。

 患者さんの多くは私と同年代でした。冗談を言い合ったり、仲よくなった患者さんも大勢いましたが、彼らといっしょに年を重ねることは叶わず、「この痛みに耐えるなら死んだほうがまし」と言うほどの壮絶な痛みとの闘いの末に多くの方が亡くなりました。

 この世にある痛みのうちもっとも強烈なものは、骨の折れる痛みだといわれていますが、鎌形赤血球症が骨にまで及ぶと、体中で骨折が起こっているような痛みに襲われます。その痛みは想像を絶し、患者さんの苦しんでいる姿は、医師も思わず目を背けたくなるほど悲痛なものでした。

 同年代の若者が効果的な治療法もなく、こんなに激しい痛みと闘いながら人生を終えなければならない現実に、私は大きな憤りを感じました。

 なぜ、こんな痛みがなければいけないのか。

 このような痛みとともに生きる意味は何なのだろうか。

 目の前で苦しんでいる人を苦痛から救いたい。

 医学の力でこの病気を解明し、患者さんを救うことが私の使命だと思いました。

 振り返れば、鎌形赤血球症との出合いは運命だったのかもしれません。

 私が医師になりたいと思ったのは一二歳のときのことでした。シュバイツァーという人物への強い憧れがきっかけです。

 シュバイツァーは、一八七五年、ドイツの牧師の家庭に生まれ、アフリカのガボンへ行き、第一次世界大戦中には捕虜となりながらも、医療活動と宣教に従事しました。その功績は、マザー・テレサやガンディーと並び称され、一九五二年には、ノーベル平和賞も受賞しています。

 私自身がクリスチャンの家庭で育ったことも影響していると思いますが、伝道と医療活動に生涯を捧げたシュバイツァーの姿は、一二歳の私にとってはじめてのヒーローでした。それ以来、シュバイツァーのように僻地医療に携わり、困っている人を助けたいと思うようになったのです。

 一二歳の少年が抱いた純粋な思い、すなわち「人の役に立ちたい」という思いは、それ以来、いつも私と共にありました。

 それから四〇年後、鎌形赤血球症の研究のため、本当にシュバイツァーと同じアフリカの大地に立っていたとき、私は言いようのない感動と運命の不思議を感じずにはいられませんでした。


※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。
Facebook   Twieet

新原豊

新原 豊(にいはら・ゆたか)
1959年東京生まれ。ロマリンダ大学宗教学部卒、同大医学大学院卒。1989年よりUCLAハーバー総合病院にて血液内科と腫瘍内科に所属。ハーバード大学で公衆衛生学修士課程を修了。2005年よりUCLA医学部教授に就任。Emmaus Life Sciences, Inc. 会長兼CEO、EJホールディングス㈱ 取締役会長。Emmaus Life Sciences, Inc. の株式シンボルは、”EMMA” です。




[ 人気の記事 ]

第230回 碧い目が見た雅子妃の嘘と真

第249回 尻軽女はどこの国に多いか

特別インタビュー アシュラムセンター主幹牧師・榎本恵氏 後編

NITTO TIRE 水谷友重社長 ロングインタビュー① アメリカについてよく知ることが大切

第265回 天才と秀才、凡才の違い

第208回 日本と北部中国に多い下戸

第227回 グレンデールに抗議しよう

特別インタビュー アシュラムセンター主幹牧師・榎本恵氏 前編

第173回 あなたの顔の好みは?

NITTO TIRE 水谷友重社長 ロングインタビュー③ アメリカについてよく知ることが大切



最新のクラシファイド 定期購読
JFC International Inc 新撰組10月 Cosmos Grace CCT pspinc ロサンゼルスのWEB制作(デザイン/開発/SEO)はSOTO-MEDIA 撃退コロナ音頭 サボテンブラザーズ 





ページトップへ