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コラム

ピアノの道
vol64 20年後

2021-09-03

 皆さんはどこで9.11を知りましたか?
 
 私は日本での演奏活動を終えて実家でNYに帰る準備をしている時、世界貿易センターに飛行機が突っ込む映像を観ました。映画だと思いました。NY便が復旧してすぐ帰った理由の一つは可愛がってくれた指揮者が危篤だったからです。着陸してすぐお見舞いに行きました。日暮れ直後なのにまるで丑三つ時の様に真っ暗で、ブロードウェイが閑散としていました。勢い良い南部訛りの英語とエキセントリックな言動で巷では有名だった指揮者が、骨と皮になって私の手を握りながらただ何度も私に頷いて見せました。(死に逝く人は個性を脱皮していくのかなあ)と思った事を覚えています。当時の私のアパートはマンハッタンからハドソン川を隔てたクイーンズ側にありました。何週間も燃え続けた世界貿易センターの煙の異様な匂いで、私は何度か吐きました。消火活動に当たる救助隊の休憩所となった教会でピアノを弾きました。煙で黒くなった消防服を半分脱いだおじさんが演奏する私の前で合掌したのが忘れられません。
 
 あれから20年。
 
 タリバンがアフガンを制圧したのが8月15日。予定よりも早い米軍完全撤退が混乱の中で8月30日に完了。私の世代には9.11で愛国心や民主主義の理想に燃え、志願した軍人が多いのです。彼らにとっては「戦友は何のために死んだ」「自分は何のためにアフガンで戦った」という苦悩の時。そしてアメリカ全体にとっても、パンデミックの情報ですら意見が対立するこの国で、ベトナム撤退そっくりの混乱を極めた阿鼻叫喚の避難光景がテレビで全世界に流れる中、これからのアメリカをどう考えるべきなのか問われる時です。
 
 国とは、政治とは、国際関係とは何なのか。
 
 こういう時音楽馬鹿な私の唯一の強みは、恥ずかしげなく理想論を唱えられることです。
 
 人間みな兄弟。

この記事の英訳はこちらでお読みいただけます。


※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。
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平田真希子 D.M.A. (Doctor of Musical Arts)

日本生まれ。香港育ち。ピアノで遊び始めたのは2歳半。日本語と広東語と英語のちゃんぽんでしゃべり始めた娘を「音楽は世界の共通語」と母が励まし、3歳でレッスン開始。13歳で渡米しジュリアード音楽院プレカレッジに入学。18歳で国際的な演奏活動を展開。世界の架け橋としての音楽人生が目標。2017年以降米日財団のリーダーシッププログラムのフェロー。脳神経科学者との共同研究で音楽の治癒効果をデータ化。音楽による気候運動を提唱。Stanford大学の国際・異文化教育(SPICE)講師。

詳しくはHPにて:Musicalmakiko.com




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