What’s Up, 神主さん?
第19回 拝礼の作法【前編】作法は武道の「形」
2021-05-02
近年、欧米人の間で神道が注目されるようになり、自宅に神棚をお祀りする人が増えてきました。先月はスウェーデンに、今月はイギリスに神棚を送りました。2人とも日本人ではありませんが、神道を知り、その生き方に共感を覚えたそうです。
以前は日本ではほとんどの家に神棚があり、拝礼やお供えの作法をいつの間にか覚えていました。しかし、住宅事情などでそうした習慣から遠ざかってしまう人が増え、自然を敬い、感謝を伝える日本の文化・慣習が失われつつあります。
みなさんは拝礼の作法をご存知でしょうか?
拝礼の前には心身を清めるのが礼儀です。
神社での手水は柄杓を使いますが、自宅では柄杓はないので蛇口の下で行います。左手、右手の順ですすぎ、左の手の平を丸めてカップのようにして水を入れ、その水を口に含んで軽くすすいで出します。出す際に左手で口元を覆います。左手をすすぎ、蛇口を閉めて清潔なタオルで手を拭きます。
拝礼の作法は「二拝二拍手一拝」。「拝(はい)」とは90度のお辞儀です。手の平で膝頭を覆うと大体90度になります。手を前で交差させたり、腿(もも)の横に手の平をつけたりしたままお辞儀をする人を見かけますが、正しい作法は前側の腿の付け根に手の平をつけ、それをそのまま膝頭に向けて滑らせてお辞儀をします。お尻を後ろに突き出すようなイメージでするとやりやすいです。
拍手は胸の高さでします。胸から20センチくらい先に手首があるような位置で、指先を目の前にいる人の胸に向けるイメージで合わせます。拍手を打つ前に右手を少し手前にずらし、3秒で2回拍手をするような感覚で手を打ちます。2回目の拍手が終わったら、ずらしていた右手を戻し、左手と合わせてから手を下ろして、拝をします。
こうした作法はいつ、誰が決めたのか分かりません。神道は2000年以上前からあったので、古代の日本人が敬意を払う作法として確立していったと思われます。
「作法」という表現をするように、また、「神教」ではなく「神道」と表現するように、神道は茶道や書道、剣道などと同じ「生き方」です。作法は「形」です。こうした作法や生き方を次世代に、そして日本に興味のある外国人に伝えることができるよう日本人が太古の昔から受け継いできた文化伝統・習慣を一緒に守っていきましょう。
※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。

