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旅は呼んでいる。
vol.53 宮城県

2021-03-26

　「だが断る」、「考えるのをやめた」。ストーリーは元より、独特なセリフやファッションでも人気が高い漫画シリーズ“ジョジョの奇妙な冒険”。中でも岸辺露伴というキャラクターが好きなのだが、彼は杜王町に住む人気漫画家という設定だ。その杜王町は原作者の出身地、宮城県・仙台市がモデルだそうで例の聖地巡礼がてら行ってみた。
　

　さて、せっかくなのでご当地グルメの牛タンを食べよう！と意気込んでいたら、県内在住の知人に「いや、あれ実は大体がオーストラリア産なんだよ」と出鼻をくじかれた。そこで勧められたのが“ばくらい”だ。ホヤとナマコの腸で作られた珍味で、これが地酒の伯楽星にもよく合う。後に北海道で獲れる赤ホヤと食べ比べをしたが、宮城県産の真ホヤの方が甘味が強くて美味しかった。また、珍しいモノでいえば、気仙沼市にある“ぴんぽん”という個性的な居酒屋で食べたサメの心臓、通称“モウカの星”もクセになる旨さだ。
　

　お花見時期に行くなら、県内の名所ランキング上位にも入っている大河原町の“一目千本桜”をぜひ。夕方目がけていくとライトアップされてより綺麗で、見物した際はたまたま寒く桜の花に雪が積もる貴重な光景も見られた。そこから車で30分とすぐの鎌先温泉は600年前から湯治にいいとされ、風情もあり良かった。かの伊達政宗公も訪れたそうだ。
　

　―と、原稿を書いている最中に宮城県で大きな地震が起きた。東日本大震災から10年の節目に、なんと理不尽な…仙台空港近くの閖上はかつて居住エリアだったことが想像出来ないほどの更地で、そこにぽつんと佇む中学校の時計が地震発生時の2時46分を指したまま止まっていたのを思い出した。
　
　肝心の聖地巡礼は、仙台市内をドライブしているだけで広瀬通りや花京院など登場人物に関する地名や、作中に描かれた勾当台公園、定禅寺通りなどあっさり通過してすぐ済んでしまった。漫画に惹かれてふらりと行ったが、他にも松島や塩釜、蔵王などたくさんの名所があり、嬉しい誤算となったのだった。

※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。