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コラム

マイ・ワード・マイ・ヴォイス
vol.9 つながり

2021-03-05

 2011年以降、日本では「つながり」ということばを数多く目にしてきました。地域住民とつながろう、家族とつながろう、 ◯◯でつながろう。「つながり」は大変に重要なことばでした。

 人と人がつながることは大切である反面、ネットに四六時中アクセスする現代人のライフスタイルは「つながり」の意味を変化させてもきました。
 
 一度目にした情報を元にネットのサイト、SNS、アプリなどのアルゴリズムが「この人にとって重要だと思われるニュース」「この人が興味を持つと思われる商品」などを選び出し、それに「いいね」を押すことでさらに最適化された情報が選び出される。私たちは何かを良いと認めたことで「それを良いと認めた人」になり、「認めた人」向けのコンテンツばかりが目の前に並ぶループの中にいます。
 
 そして今や情報の選択のみならず、社会活動への署名、政治家への賛同・反対、デモへの参加なども「いいね」のようにワンクリックで行えます。支持する政治家を当選させるのも、不祥事を起こした公人を失職させるのも、事業を支援するのも画面をタッチするだけ。社会を動かすほどの決断が「いいね」でなされる中では、「つながる」こともワンクリックで済ませられそうです。
 
 クリックするかしないか、という単純化された選択が現実の世界を左右する中で、私たちは「つながること」の意味を全面的な賛成、「つながらない」ことを全面的な否定と捉えてはいないでしょうか。意見を異にする者どうしには「つながり」など存在しないように。
 
 本当に意味のある「つながり」は「お互いの違いを再確認できる関係」ではないでしょうか。例えばAさんは子供への体罰を容認する人だとします。彼がなぜ容認するのか、対話を通じて深く掘り下げる。彼が育った時代は体罰を通じた教育が伝統だったと分かる。だとすれば彼の「伝統を受け継ごう」という意思は理解できてもその手段は受け入れられない。Aさんのことを「自分と信念は似ているがその表現方法が違う人」と捉え直すことができる。
 
 違う世界観の人間と向き合い、お互いの視点をアップデートする作業。そのやりとりを続けられる関係。それを「つながり」と呼ぶことはできないでしょうか。


※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。
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葛生賢治

哲学者。早稲田大学卒業後、サラリーマン生活を経て渡米。ニュースクール(The New School for Social Research)にて哲学博士号を取得した後、ニューヨーク市立大学(CUNY)をはじめ、ニューヨーク州・ニュージャージー州の複数の大学で哲学科非常勤講師を兼任。専門はアメリカンプラグマティズム、ジョン・デューイの哲学。現在は東京にて論文執筆、ウェブ連載、翻訳に従事。ウェブでは広く文化事象について分析を展開。




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