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コラム

マイ・ワード・マイ・ヴォイス
vol.7 自己満足度

2021-01-08

 2018年に日本の内閣府が世界7カ国の若者を対象に行った「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」には面白い結果があります。

 「自分自身に満足している」という質問に「そう思う」「どちらかといえばそう思う」と答えた人数の割合が最も多いのはアメリカで87.0%、日本は45.1%で最下位でした。「自分には長所がある」に肯定的に答えた人も日本は62.2%で最下位。1位のドイツは91.4%。

 これにより「日本の若者は自己肯定感が低い」といった論調の報道が多くされましたが、これには注意が必要です。

 同調査では「自分は役に立たないと強く感じる」に対する肯定的な回答が日本は51.7%なのに対してアメリカは55.2%と上回っています。

 この他にも「自分の親から愛されていると思う」「今が楽しければよいと思う」など様々な質問があり、この調査に有識者として分析をした北海道大学大学院の加藤弘通准教授によれば、それぞれへの回答と「自分自身に満足している」への回答との関連性に日本の若者だけ違うパターンが見えてくるそうです。

 アメリカやフランスでは「自分は役に立たないと強く感じる」に肯定的に答えた割合が多いにもかかわらず、「自分自身に満足している」の割合が高くなっている。これは「自分が他者に役に立つかどうか」とは無関係に自分の満足度を決めることを意味し、逆に日本の若者は他者に役に立つかどうかを加味した上で自分の満足度を決めている、とのこと。

 そして私が注目したのは「他人に迷惑をかけなければ、何をしようと個人の自由だ」に肯定的に答えた人数も日本が圧倒的に少なく42.2%で、次に少ないドイツですら76.6%だったこと。

 どんな人物像が浮かんでくるでしょうか。他者に役立つことが自己評価につながり、たとえ人に迷惑をかけなくても自分の自由を制限すべきだと考える、そんな人。

 「常に空気を読む日本人」が見えてこないでしょうか。これは「若者」ではなく、日本人的なマインドが若い世代に表れた結果とは言えないでしょうか。

 もちろん勝手な解釈は危険です。けれどもデータの一部だけを元にした短絡的な判断が「若者」と「年長者」を分け、「最近の若者はXXだ」という偏見を不必要に生み出す危険性も見えてこないでしょうか。


※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。
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葛生賢治

哲学者。早稲田大学卒業後、サラリーマン生活を経て渡米。ニュースクール(The New School for Social Research)にて哲学博士号を取得した後、ニューヨーク市立大学(CUNY)をはじめ、ニューヨーク州・ニュージャージー州の複数の大学で哲学科非常勤講師を兼任。専門はアメリカンプラグマティズム、ジョン・デューイの哲学。現在は東京にて論文執筆、ウェブ連載、翻訳に従事。ウェブでは広く文化事象について分析を展開。




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