旅は呼んでいる。
vol.49 静岡県
2020-11-27
“富士山”は静岡県のものか山梨県のものか―日本の象徴である霊峰はこの二県に跨っており、互いにライバル視しているのだとか。
日本人なら一度は登頂してみたい、と憧れたものの、片道六時間は無理と潔く諦め“富嶽三十六景”よろしくナイス・ビュー・ポイントを探す旅に出た。そして辿り着いたのが、富士五湖のひとつ“精進湖”(正確な住所は山梨県)。決め手は、湖面に逆さ富士が綺麗に映ることだ。特に真冬の星空とのコラボレーションは氷点下近くの寒さを忘れるほど美しく、夜明けまで夢中でカメラのシャッターを切り続けた。
また、もう一つかねてより見たかったものが沼津港深海水族館にある“シーラカンス”だった。白亜紀を最後に絶滅したと思われていた古代魚が冷凍保存され、今にも動き出しそう!さらに、三葉虫のような見た目のダイオウグソクムシは生きた状態で観察できる。ゴキブリみたいという意見もあるが、どちらかというと映画“エイリアン”に登場するフェイスハガーにそっくり。いずれにしてもグロテスクなので顔を背ける人も多い。他にも、脚が短く可愛いらしいメンダコ、目がギョロっとしたサメの一種ラブカといった深海生物が盛り沢山で、見応えがあったなぁと満足して退館すると、目の前には『深海魚丼』、『深海魚バーガー』の看板が…あの時、チャレンジしなかったのを今とても悔やんでいる。
世界各地にある伝承のひとつ、羽衣伝説の舞台と言われている“三保の松原”へも足を運んだ。天女が羽衣をかけたという松を写真に収めた際、光の加減で薄いピンク色の帯のようなものが映りいい思い出に。また、延々と続く砂地と青い海、緑の松林の奥の富士山はまた違った表情で、見る土地や角度でこんなに違うのかと新鮮だった。
さて、その富士山は結局どちらの、誰の物なのか。実は山頂自体は浅間大社という神社の敷地に属するという。なるほど、皆が崇拝する神聖な場所なので神様の領域、ということか。日本らしくて好きな逸話だと思った。
※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。

