ピアノの道
vol.36 耳を澄ますと理性が休まる
2020-07-01
「You cannot think and listen at the same time.(聴くことと考えることは同時にはできない)」もう10年以上前のヨーガの先生の言葉です。その言葉に科学的な根拠が在ることを知ったのは自分が脳神経科学と音楽の研究に携わってからこっち—最近の事です。
聴覚は私たちの生存本能に一番直結している感覚です。だから音は脳内で一番早く処理されます。眼から入った情報を脳が処理するのに0.2秒かかりますが、音は0.025秒。これは脳の中で音は理論を司る前頭葉をすっ飛ばすからです。音を聞くと無意識に体が反応しますよね。音の方を振り向いたり、目覚ましに飛び起きたり...これはそういう理由なんです。
音は理論をすっ飛ばす。…だから脳内で考えが暴走している時は、音楽を聴くことに集中してみてください。雑念が消えます。音楽とノイズの違い。これは脳がそのパターンを聴きとれるかどうかなんだそうです。だからびっくりするような突発的な音や規則性のない音、予測が付かない音は脳は「音楽」とは認知しませんが、波の音や鳥の鳴き声、懐かしいメロディーや、踊れるリズム…これらは全て、集中する事によって安心感を得られる「音楽」です。
瞑想では、先生によく自分の呼吸に耳を澄ますように言われますよね。息を吸って吐く音。これも「パターン」という意味では、音楽なのかなと、最近思います。
私は最近、毎週土曜日の5PMから自分のYouTubeチャンネルで30分の演奏会をライブ配信しています。それから平日(月~金)の6AMから30分は朝練のライブ配信!今はゴルトベルグ変奏曲を毎日一つずつ、解説を加えながらお届けしています。皆いつもにも増してチャレンジを多く抱えているご時世だからこそ、音楽家として私は皆さんに安心をお届けします。
私のYouTubeチャンネル(https://www.youtube.com/c/MakikoHirata)にいつでも遊びに来てください。
この記事の英訳はこちらでお読みいただけます。
https://musicalmakiko.com/en/?p=1941
※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。

