Nikkan SAN

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コラム

ピアノの道
vol.33 音楽は感じる時空

2020-05-20

 社会的に奨励される感情と、抑圧される感情が在るような気がします。嬉しさや楽しさを表現する事は奨励されますが、悲しみや寂しさや苦しみを公表する事ははばかられる風潮があります。でも音楽に於いては、全ての感情が許容され、探求されます。Covid-19の外出禁止令から1か月半。世論やニュースに見受けられる将来への不安や感情の起伏を、私も個人的に感じながらこの時期をすごしています。そしてこの数週間で、友人二人の死をも経験しました。そういう体験を経て最近しみじみと、音楽というのは感じる時空を提供する役割を担っているのではないかと考えています。

 「忙しい」という漢字は「心を亡くす」と書きますよね。私は時々、私の周りの人々が感情を忙殺するために用事をつくっているのではないか、と勘繰ってしまう時があります。最近特に、そういう人たちのために心を込めて丁寧にピアノを弾くようになりました。勿論ビデオ制作やライブ配信で公開される演奏の時は、聞いてくださる皆さんが呼吸を落ち着け、自分の感情を許容できるひと時を味わっていただけるように意識していますが、それだけではありません。毎日のウォームアップの時、ただ一人で練習している時も、他の方々が自分に許せない感情を少しでも私が代わって感じて昇華して差し上げられないか、という思いでピアノに向かっています。もしかしたら音楽家や芸術家の役割って社会や世代を代表して作品に感情を浄化させるものなのではないか…と。

 Covid-19までの私の生活は炒め物をずっと作り続けている感じでした。炒め物は手早さが肝心。材料処理:トントントン!加熱は強火で:ザー!味付け:パッパ!急いで味見して次の炒め物!そんな音楽生活です。でも今の生活はシチューを煮込んでいる感じです。いつかこのシチューを囲んで皆で微笑み合える日が来ることを心待ちに、弱火でとろとろぐつぐつ気長に色々な想いを煮込んでいます。

この記事の英訳はこちらでご覧いただけます。
https://musicalmakiko.com/en/nikkan-san-the-way-of-the-pianist/1790


※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。
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平田真希子 D.M.A. (Doctor of Musical Arts)

日本生まれ。香港育ち。ピアノで遊び始めたのは2歳半。日本語と広東語と英語のちゃんぽんでしゃべっていた娘を「音楽は世界の共通語」と母が励まし、3歳でレッスン開始。13歳で渡米しジュリアード音楽院プレカレッジに入学。18歳のボリボリビア演奏旅行を皮切りに国際的な演奏活動を展開。世界の架け橋としての音楽活動を目標に、2017年以降米日財団のリーダーシッププログラムのフェローとして活動。音楽のヒーリングについて、脳神経科学者との共同研究や、講義もする。

詳しくはHPにて:Musicalmakiko.com




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