What’s Up, 神主さん?
第5回 慰霊祭
2020-02-26
9年前の3月11日、日本は地震と津波により多くの命を失いました。当神社では毎年、この時期にロサンゼルスで開催されるメモリアル・イベントにて震災死没者慰霊祭をご奉仕させていただいています。津波で亡くなられた方の多くは漁業関係者でした。漁師は船に神棚を設けて大漁と安全を祈願します。そんな背景もあり、当神社では主催者側に神道式での慰霊祭のご奉仕を申し入れ、毎年、慰霊のお祭りをさせていただいています。
「お祭り」と言うとなんだか賑やかで楽しいイメージがありますが、「祭り」は「祀(まつ)る」の名詞形。神霊に感謝や祈りを捧げる行為のことですので、必ずしも賑やかなものではありません。神道ではお葬式を「神葬祭」と言います。
お祭りは、日本人が 古(いにしえ) より受け継いできた作法・形に則って行います。茶道に作法が、柔道に形があるように、神道の拝礼は形であり、作法なのです。「20分もあるんですか? ここはアメリカですから5分でやってください」と言う方もいらっしゃいますが、自然の力、亡くなった方への気持ちは、国も場所も言語も関係ないと私は思っています。また、慰霊祭は亡くなられた方へ敬意を払う行為です。自分のお葬式を親族が「長いから短縮して5分で終わらせた」とされて喜ぶ人はあまりいないと思います。
お祭りは、まずは「修祓(しゅばつ)」(お祓い)から始まります。感謝やお願いをするとき、汚れたまま相手に会ったりはしないでしょう?
慰霊祭では、祭場(お祭りをする会場)に神様に来ていただきます。亡くなられた方の慰霊をお願いする神様を「降神之儀(こうしんのぎ)」でお迎えした後は、お供え物を捧げる「献饌(けんせん)」です。何かをお願いするときに手ぶらでは失礼ですよね?
お供え物を出したら、祈願や感謝を綴ったポエムを神主が読みます。神道には聖書や経典はありません。神主が読むのは、古より伝わる大和言葉で綴った詞です。
祈願や感謝を言葉で伝えた後は、 それらの気持ちを込めて玉串をお供えし、二礼二拍手一礼します。これが神道の作法・形と言えるでしょう。
祈願や感謝を玉串を通して心で伝えた後は、お供え物を下げ(撤饌(てっせん))、神様を祭場からお見送り(昇神之儀(しょうしんのぎ))し、お供えした御神酒(おみき)などをいただいてお開きとなります。
今年の震災死没者慰霊祭は3月7日(土)、ロサンゼルス市警本部の前庭で午前11時50分から行います。震災で亡くなられた方々への慰霊にぜひご参列ください(参列は無料です)。
※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。

