来夏の映画観ようよ♪
vol.52 パラサイト 半地下の家族
2020-02-21
庭つきの立派な一戸建て住宅に住み、高級家具や高価な食器に囲まれ、毎日贅沢な食事をして暮らしたい―と憧れる人は多いだろう。私事だが、バスルームとキッチン込みで14㎡(150ft²)という狭い部屋で暮らしていた頃も特に不満を感じなかったので、物欲は無い方かもしれない。
韓国、ソウル市内のアパートの“半地下”で貧しいながらも仲睦まじく暮らすキム家。父ギテクも母チュンスクも定職が無く、息子ギウ、娘ギジョンは大学に行けず、皆で内職をして何とか生活をしていた。しかし、ある日ギウの友人で名門大に通うミニョクが訪れ、裕福な社長令嬢パク・ダヘの家庭教師の職を紹介してくれる。高額な報酬の仕事を得たギウは、ふとした思いつきから妹にも仕事を与えることに成功、それを機にキム家はまるごとパク家に上手く取り入り…。
貧富の差を見事に風刺したブラック・コメディと評価され、2020年のアカデミー作品賞を受賞した本作。確かに、キム家の言葉巧みな嘘に気持ちいいほど騙されていく社長と社長婦人ヨンギョという2家族間のやり取り、また後半、キム家の絶体絶命のピンチで北朝鮮のニュースアンカーの物真似が出てくるくだりなど笑いの要素は随所にあるのだが、なかなかそうも単純には笑えなかった。ああ、これはもうイヤな予感しかしない…というヒヤヒヤした展開が続き、やっぱり!と思わず目を背けたシーンもあり、映画を見終われば、上を見ればキリがなく、下を見てもキリがない、そんな露骨で痛烈なメッセージを受け取った。なお、本作の重要なキーワードである“半地下”の住居が実際に存在するのか調べたところ、元々は北朝鮮と戦闘になった際、防空壕として使用する為に作られた建物の地下部分のことだそうで、相場の4割ほどの安い家賃で借りられることから所得の少ない人々に需要があるという。
定職があって、家がある。それは当たり前のようで当たり前でなく、普通に生活ができ、家族が健在であれば十分幸せなのだとあらためて思った。
※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。