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コラム

ピアノの道
vol.27 『時を刻む』ことの意味

2020-02-19

 時間の感覚は主観的です。「The art of time(時間の芸術)」と言われる音楽の醍醐味の多くはそこにある。でもメトロノームの商品化で、音楽の速度を定量化するという概念が広まりました。メトロノームの弊害はそのまま産業革命がもたらした価値観の社会的弊害の象徴として語れるのでは?今朝練習しながらふと、そんな壮大な考えが頭に浮かんでしまいました。

 時間の感覚が主観的なのは、過去は記憶、将来は想像、そして現在は瞬間的かつ感覚的だからです。印象が強い体験をした時間は長く感じる。逆に退屈な時間は記憶には残らないでしょう。音楽で言えば、2分間しか無い曲の最後の音が消え入るのを聞き入るとき、あたかも旅から帰ってきたような、夢から覚めるような感覚を味わうこともあれば、30分の曲を固唾をのむように聞き入ってまるで一瞬の出来事だったような気がするときもあります。

 ホールの音響でも、テンポの感覚は変わります。残響の多いホールでは、速いパッセージは音が濁って「速い」ではなく「聞こえにくい・分からない=記憶に残らない」になりがち。なので、かみ砕くように弾かなくてはいけません。逆に残響が少ないホールでは、リズムが非常に重要です。奏者も聴衆も一体になって乗れるリズムというのは、奏者の弾ける一番速いテンポでは、概してありません。なんにせよ、音楽に於いて大事なのはBPM(Beats Per Minute=一秒間に何拍あるか)ではない、ということです。大事なのは、メロディーの流れ、リズムの躍動感、曲の構築、感動、そして最終的に何が記憶に残るか、です。

 BPMが奏者の目標であってはならない様に、私に言わせれば長寿は人生のゴールであるべきではない。大事なのは、我を忘れる没頭ができる瞬間。微笑んだり笑ったりしながら浸れる思い出をいかに多く周りの人と共有できるか。自分の創作・発信。そういった事ではないでしょうか?人生で大事なのは計測できるものではない。音楽・創造性・共感・愛情...私が、自分の音楽人生を賭けて世に訴えようとしているのは、そういう価値観の転換です。


この記事の英訳はこちらでご覧いただけます。
https://musicalmakiko.com/en/my-musical-mission/1459


※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。
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平田真希子 D.M.A. (Doctor of Musical Arts)

日本生まれ。香港育ち。ピアノで遊び始めたのは2歳半。日本語と広東語と英語のちゃんぽんでしゃべり始めた娘を「音楽は世界の共通語」と母が励まし、3歳でレッスン開始。13歳で渡米しジュリアード音楽院プレカレッジに入学。18歳で国際的な演奏活動を展開。世界の架け橋としての音楽人生が目標。2017年以降米日財団のリーダーシッププログラムのフェロー。脳神経科学者との共同研究で音楽の治癒効果をデータ化。音楽による気候運動を提唱。Stanford大学の国際・異文化教育(SPICE)講師。

詳しくはHPにて:Musicalmakiko.com




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