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コラム

Los Angelesの顔
No.94 豊島年昭 さん

2020-01-18

すし店「Sushi Gen 鮨元」創業者
日系レストラン協会(JRA)会長補佐
南加ねぶた囃子保存会会長


◆昨年12月、農林水産省より「第13回日本食普及海外普及功労者」(*)表彰を受賞した感想は。

 思いがけない受賞で驚きました。皆さんのご協力があってのことなので、皆さんに感謝しております。

 今回、私の他に、日本食レストランのチェーン店経営者やテレビ番組や著書を通して日本食の紹介をされている日本料理人なども受賞されました。他の受賞者は広域で日本食を普及されていますが、私はリトル東京の一店のみなのでとても驚きました。

*「日本食普及海外普及功労者」表彰は、農林水産省が平成18年度から実施。日本産農林水産物・食品の輸出の一層の拡大に向けて、日本食・食文化若しくは日本産農林水産物・食品の海外での紹介、普及等に多大に貢献してきた者等に対し表彰する。


第13回 日本食海外普及功労者表彰では5人が受賞した。受賞者は、豊島年昭さん、アーレフ・サアーデさん、大野剛浩さん、小西史彦さん、 滕 玉娣(とう ぎょくてい)さん。安倍晋三内閣総理大臣も出席し、江藤 拓 農林水産大臣が表彰状を受賞者に授与した=2019年12月13日、東京都千代田区


◆ロサンゼルス・リトル東京で「鮨元」を創業するまでについて。

 私が日本ですし職人として働いていた頃、先輩たちが2年契約で海外の和食レストランで働いた後に、日本で独立して店を出しているのを見て、私も海外で頑張ってその後に独立しようと思い、渡米を決めました。

 すし職人の派遣をしていた三長会鮨調理士紹介所を通して、1973年にロサンゼルスの日本食レストラン「東京會舘」で働くようになりました。

 「東京會舘」にはすしバー、天ぷらバー、鉄板、しゃぶしゃぶ、そして和食のキッチンがあって、私はすし部門を任されていました。

 当時、アメリカ人のお客様の他に、ロサンゼルスの日本商社にお勤めの方々やその取引先のお客様が多かったです。

 私は契約を更新して6年間、勤務して、1980年に独立して、リトル東京に「鮨元」を創業しました。

ロサンゼルス・リトル東京にある鮨元 


◆カリフォルニアロールは「東京會舘」が発祥だった。

 私が1973年に働き始めた時には、すでに先輩がカニカマとアボガドをロールにしてお客様に出していました。当時は、まだ「カリフォルニアロール」という名前ではなくて他の名前でした。

 それが後に「カリフォルニアロール」と呼ばれるようになり、あれから47年も経った現在も、当時と同じカニカマとアボガドを使い、海苔を内側にした「裏巻き」などで、続いています。

◆「鮨元」は今年で創業40年、開店前から行列ができる鮨屋となった。創業から一番苦労したことは。

 言葉ですね。英語が分からなったことが一番の苦労ですが、こちらが黙っていてもお客様が好きなもの、食べたいものを日本語でおっしゃってくださるので、そのままズルズルと英語の勉強をしないで今日まで来てしまいました。

◆いつ頃から日本食の普及について意識し始めたか。

 1999年に南カリフォルニアレストラン協会(現 米国日系レストラン協会・JRA)が設立された頃からです。私は協会設立メンバーの一人でした。

 1997年頃からロサンゼルス近郊の飲食店では、衛生局、アルコール管理局、移民局、労働局などの手入れが頻繁に行われるようになって、トラブルが増えていきました。

 この問題に対応するためには、南カリフォルニアの日本食関係者全員が団結した方が、一店や一社で対処するよりパワーになるということで、南カリフォルニアレストラン協会を設立しました。

 カリフォルニア州の衛生局などのスタッフは日本食についての知識が不十分でした。そこでアメリカの方々に日本食の技術、知識、歴史などを知ってもらうことは大切だと思うようになりました。このような経緯で、海外での日本食普及について意識し始めました。

 2014年には、すしを握ったり、生魚で刺身を作ったりする時は手袋を着用することが義務付けられました。手袋を着用すると、魚を手に取った時の感覚が全く違い、魚の鮮度も分からなくなります。

 結局、この法律は数ヶ月で撤廃されましたが、この陰にはJRAをはじめとする日本食関連の団体や企業などの団結とカリフォルニア州内にある日本国総領事館などのご協力がありました。

JRA恒例イベント「すし慰問」でシニアの施設を訪問

◆これからのすしの方向性と日本食の普及について。

 現在、2種類のすしがあります。昔ながらの生物を乗せて握る本格的な日本的なすし。それと、なんでもかんでも乗せてロールにするすしがあります。

 近年、ドンドンこのロールの傾向が強くなってきています。海外のお客様は、このロールからの方がすしに馴染みやすいのかもしれません。

 ロールには技術がいらないといえばいらないかもしれませんが、自分が好きに創作できるので面白いかもしれません。しかし、これを日本食として見なして広められるかどうかは、私には分かりません。

 日本政府は日本食を世界中に広めていくことについて、非常に力を入れています。海外だけでなく、日本にある日本食企業なども表彰していることからも分かります。

 私は、正(せい)ある日本食を普及させることが大切だと感じているので、正しい日本食を普及させていけるのならば、私たちも日本政府に非常に感謝したいです。

 ビジネスの観点から話をすると、ただ「日本食」という名前を借りてビジネスにするのか、または正統な日本食を続けていけるビジネスにするのかというと、正統な日本食をしていくのは大変難しい。続けられるか…難しいです。
 どちらを自分が取るか、どう商売に繋げるか、これは悩むしかありません。

 私の本意としては、正統な日本食、正ある日本食を強めていきたいです。自分の選択がビジネスとして“負け”だったら…という心配もありますが、生ある日本食をお客様に勧めていきたいというのが、私の希望です。

 今までも、本格的でない、日本食のような料理も出てきましたが、すぐに消えてしまいました。日本食ブームに乗せて、始めはいいのですが、長く続く日本食ではなかった料理もありました。

 特にすしについては、本物を、我々の正統なすしを今後も残していければと願っています。

JRA恒例イベント「すし慰問」。シニアに握りたてのすしを振る舞う豊島さん(右)


◆海外での日本食普及に加え、日本の伝統文化である青森の「ねぶた祭」を、長年にわたりロサンゼルスで紹介していることについて。

 青森でねぶたをご覧になって感動した日系商社の方が、ロサンゼルスでも「ねぶた祭」ができないだろうかとおっしゃったのが始まりでした。多くの日系企業や団体、私が会長をしていた南加青森県人会も協力して、ねぶたは2007年の「二世ウィーク祭り」にアメリカ初上陸しました。
 この時、私は小さい頃に見たねぶたを思い出して感動しまして、当初は1回だけの「ねぶた祭」ということでしたが、もっと多くの方に見ていただきたい、長年お世話になっているリトル東京を盛り上げたいと、恩返しの気持ちも込めて「ねぶた祭り」を引き継ぎました。


「LAねぶた」はハリウッドのパレードにも毎年出場=2018年(LAねぶた提供)

(左)青森観光大使として青森の魅力を発信する豊島さん=LACMAにて、2019年
(右)豊島さんと夫人の純子さん=2019年(LAねぶた提供)

豊島年昭さんプロフィール 
1973年渡米。日本食レストラン「東京會舘」 で勤務し、すし文化向上に貢献。1980年独立、すし店「鮨元」をロサンゼルス・リトル東京に構える。南カリフォルニアレストラン協会(現米国日系レストラン協会・JRA)発足時のメンバー。2003年にはJRA会長としてアメリカ人社会への日本食普及に貢献。加盟レストラン向けの食品安全セミナーの実施などを主導。JRAの取組として日系シニア施設への「すし慰問」を20年間行う。創作すしとは一線を画し、ネタにこだわる江戸前すしを堅持した日本伝統の味は、開店前から常に客が待つ行列ができるすし屋としても知られている。
日本食に 関する話題で度々ロサンゼルスタイムスなどのメディアに紹介されている。
2015年、日本食普及と日本文化継承に貢献したとして、在ロサンゼルス総領事館より総領事賞を授与。


※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。
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