旅は呼んでいる。
vol.38 イタリア ~ローマ~
2019-10-24
旅に出るには大体きっかけがあり、中には「そんなことで?」というようなものもある。自分でも呆れるが最初にパリを訪れたのは、夢で自分がバイクに乗りエッフェル塔を眺めていて、目が覚めたら実際に見たくなったからだった。ではイタリアは、というと…。
学生時代に“天使の世界(マルコム・ゴドウィン著)”という本と出会った。聖書や文学、絵画などに登場する天使について広く紹介する内容で“聖テレジアの法悦”という彫刻の写真を目にした瞬間、世の中にはこんなに美しいものがあって、こんなに神々しいものを造った人間がいたんだ!と稲妻に打たれた。修道女テレジアが天使と遭遇し、あまりの悦びで気絶しそうになっている場面だそうで、ローマでは、この彫刻があるサンタ・マリア・デッラ・ヴィットーリア教会にさえ行ければいい。それほどの気持ちで臨み、かつて写真で見た際の何倍も感激した。
とはいえ、目の前は『永遠の都』と呼ばれるだけあって古代ローマ時代からの遺物が盛り沢山。映画“グラディエーター”で剣闘士や猛獣との戦いの舞台にもなった“コロッセオ”にはもちろん足を運んだ。外から見るだけでも十分だが、中の通路には兜や甲冑、膝当て、モザイク画などが展示され、いざ闘技場を見渡すと当時は床があり見えなかった、象やトラが飼われていたであろう地下部分まで見えたのもあり、その壮大さに圧倒された。
また、有名どころの“トレヴィの泉”も行っておこうと夜に回したが、ライトアップされた様子が美しく、むしろ昼間よりも良かったかもしれない。パンテオン神殿からぶらぶらと散策するのも楽しみ、小腹が空いたのでレストランを物色していると、いきなり呼び込みの店員さんが「おいでよ!」と断る間もなく手を引っ張ってきたのでついて行くと、物凄く良心的な値段の美味しいお店だったのもいい思い出だ。そこで食べた本場のモッツァレラチーズの味は未だに忘れられない。
旅にはきっかけがあると言った。次回ご紹介する都市も、やはり同じような感じだ。
※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。