旅は呼んでいる。
vol34 長崎県 ~長崎、雲仙~
2019-08-08
毎年8月になると、終戦記念日を前に第二次世界大戦に関するドキュメンタリー番組が数多く放送される。今年で戦後74年。自分を含め戦争を知らない世代が大半を占めるいま、二度と戦争を起こさないという戒めのためになるべく見るようにしている。
長崎といえば、鎖国中の江戸時代に唯一オランダやポルトガルと貿易、それに伴う鉄砲やキリスト教伝来の歴史が思い浮かぶが、やはり1945年8月9日の原爆投下の印象が強い。“原爆落下中心地”に行った際には、近くの原爆資料館で見た被爆者の写真や焼け焦げた弁当箱、爆発の時刻で止まったままの時計など様々な光景がフラッシュバックしてこれまでに経験したことのない喪失感を覚えた。すぐそばを流れる川には全身火傷をした人々が水を求めて殺到し、折り重なるように息絶えていたという…訪れた日は一日中気分が沈んだままだった。
観光スポットでは、スコットランド出身の貿易商人グラバーが住んでいた洋風建築物のあるグラバー園や、そこから見える港にたまたま寄港していた巨大クルーズ船を楽しみ、日本三大中華街のひとつ長崎新地中華街で郷土料理の皿うどんや豚の角煮まんじゅうを堪能した。また、先日アスベスト(石綿)が検出され、現在上陸が禁止になってしまった世界文化遺産の“軍艦島”に行くことができて幸運だった。
国内旅行なのでどこか1ヵ所温泉を、と選んだのが“雲仙温泉”。長崎駅から片道およそ2時間とやや距離はあったが、車窓から見える海岸や田んぼの景色が素晴らしくあっという間。お湯に浸かるだけでなく、硫黄の香りと勢い良く上がる熱い蒸気を体感できる“雲仙地獄”も散策した。
愛知県で開催されていた“表現の不自由展”が、テロ予告のため中止になり物議を醸している。同展では慰安婦や昭和天皇をモチーフにした作品等を展示していたそうで、いずれも第二次世界大戦を想起させるデリケートな内容であることが原因のようだが、戦争についてあらためて考えさせてくれる機会になったのではと思う。
※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。